産業医として年間5万人に健康指導をする総合内科専門医の益江毅さんは「食べなければやせるという考えはもう古い」と話す。
「実は、食べ方やタイミングさえ工夫すれば、ダイエット中でも、食べてはいけないものはない。食事を減らすことは健康に悪いばかりか、やせにくい体をつくることにつながります」(益江さん・以下同)
ダイエットの成功は肝臓に左右される
やせにくい人は、肝臓に脂肪がたまった状態の「脂肪肝」になっていることが多い。脂肪肝は脂質の摂りすぎや過度の飲酒だけでなく「食事を減らすこと」でも引き起こされる場合がある。
「脂肪肝とは、中性脂肪が肝臓に蓄積された状態のこと。本来、中性脂肪は肝臓にエネルギー源として貯蔵され、そこから筋肉や細胞など、全身に運ばれます。ところが、食べる量が減ってたんぱく質が不足すると、脂肪が体に運ばれなくなる。こうして、使われなかった中性脂肪が肝臓にたまってしまうのです」
これを「低栄養性脂肪肝」といい、たとえ見た目はそれほど太っていなくても、肝臓にはたっぷり脂肪がついていることも少なくない。
実際に、日本人の3割が脂肪肝だといわれている一方で、日本でBMIが25以上の「過体重」の人は全体の2割程度。
低栄養性脂肪肝になると代謝が落ち、食事を減らしてもやせなくなり、やせるためにさらに食事を減らし、さらに肝臓に脂肪がたまり……という悪循環に陥りかねない。
内科医の左藤桂子さんも、肝臓の状態がダイエットの成功を左右すると話す。
「肝臓はアルコールなどを分解する『解毒代謝』のほか、余分な糖をエネルギーに変えて必要に応じて使う『エネルギー代謝』などの役割を担っています。それをまっとうしてもらうためには、充分なたんぱく質が必要なのです。
脂肪肝になるとその他の内臓機能の低下やホルモンバランスの乱れを引き起こすことによっても、太りやすくなると考えられます」(左藤さん)
食事量を減らしてもやせられないのは「モナリザ症候群」の可能性もある。自律神経の切り替えがうまくいかず、代謝が悪くなる状態のことだ。
医師で医療ジャーナリストの森田豊さんは、肥満患者の7割がモナリザ症候群だというデータもあると語る。
「自律神経には、体の“アクセル”になる交感神経と“ブレーキ”になる副交感神経があります。
通常、朝起きると交感神経がオンになってアクセルがかかる。すると活動量を上げるためにアドレナリンが分泌されます。アドレナリンには、消費カロリーを上げて脂肪を燃焼し、ため込みにくくする働きがある。ところが、昼夜逆転など生活リズムが乱れていたり、起きてからダラダラ過ごしていると交感神経がオンにならず、代謝が上がらないまま一日を過ごすことになるのです」(森田さん)
つまり、いくら甘いものをがまんして努力しても、体の“やせスイッチ”が入っていなければ意味がないのだ。
※女性セブン2023年4月20日号