芸能

高田文夫氏が語る親友・古今亭右朝 “幻の名人”は18歳で噺を200席カンペキにものにしていた

2001年に52歳という若さで早逝してしまった幻の名人・古今亭右朝(イラスト/佐野文二郎)

2001年に52歳という若さで亡くなった幻の名人・古今亭右朝(イラスト/佐野文二郎)

 放送作家、タレント、演芸評論家、そして立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫氏が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。今回は、超満員のうちに終わった「立川流三人の会」と、早逝した天才落語家について綴る。

 * * *
 やっとだよ。WBCが14年ぶりでしょ。こっちは15年ぶりに開催。「立川流三人の会」。第2回が2008年、まだ師匠談志も元気な頃でした。高田“クリヤマ”監督としては「立川ジャパン」を揃えるのは大変でしたよ。

 クリヤマ同様、私の人柄・人徳で集まったのでしょうがあの景色を見て「あぁコロナも終わったな」と実感。浜町のあの明治座。3階まで超満員。仕方なく立見席も出したのですがそんなものでは追いつかない3人プラス私と談志の人気。昼夜2回公演とも立見となりました。明治座の方もしみじみと「ここ40年間ずっと立ちあって来て、こんなに昼夜入った公演は初めてです」としみじみ。客が集まるというのはいいものだ。我々は人に愛されるのが仕事だからネ。

 志の輔、談春、志らく。ここだけの話、本当に仲が悪くて、口をきくのも15年ぶり。それでも集まるとすぐにみんなでグチャグチャイチャイチャ。今年の11月で立川談志も十三回忌である。出番の前、プロデューサーである私は3人を集めて言いました。「立川談志……もう今日は憧れるのは止めましょう。闘うんです。倒しに行きましょう」。横で志らくが「もうとっくに倒れてます」だと。

 感動的な昼夜公演、無事開催されましたとまずご報告。次はWBCの年に東京ドームか。談志を忘れないで下さい。

 私の「供養」シリーズはまだ続く。昭和42(1967)年、江古田の日大芸術学部落語研究会。1年生同士で会ったのが高田と田島。この田島こそのちの古今亭右朝。2001年に52歳という若さで早逝してしまった幻の名人である。志ん朝門下だが、あの談志をして「右朝がそのうち天下をとるよ。あいつほどうまく喋れる奴ァいねぇ」。誰もが認めるうまさだった。

 なんせ、学生で18歳の時に会った時、噺を200席カンペキにものにしていた。4年間私と田島はいつもどこでも一緒にいた。田島が落語をマンツーマンでいつも教えてくれた。だから私の噺(1980年代立川藤志楼で大爆発)は本格的、本寸法。江戸前そのものなのだ。大学時代、噺を教わるかわりに私は酒・煙草と女を教えた。

 2001年4月、右朝他界。志ん朝師匠が葬儀委員長、私が副委員長だった。師よりも先に逝くのは“逆縁”といっていいことではない。その年の10月、師匠である名人古今亭志ん朝があとを追うように逝った。

「右朝ふたたび 二十三回忌追善の会」。5月8日下北沢・北沢タウンホール。私とオール日芸で志らく、一之輔、わさびが出演します。右朝のことも忘れないで下さい。

※週刊ポスト2023年4月21日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

西武・源田壮亮の不倫騒動から5カ月(左・時事通信フォト、右・Instagramより)
《西武源田と銀座クラブ女性の不倫報道から5か月》SNSが完全停止、妻・衛藤美彩が下していた決断…ベルーナドームで起きていた異変
NEWSポストセブン
大谷夫妻の第1子誕生から1ヶ月(AFP=時事)
《母乳かミルクか論争》大谷翔平の妻・真美子さんが直面か 日本よりも過敏なロスの根強い“母乳信仰”
NEWSポストセブン
ホストクラブで“色恋営業”にハマってしまったと打ち明ける被害女性のAさん(写真はAさん提供)
〈ちゅーしたら魔法かかるかも?〉被害女性が告白する有名ホストクラブの“恐ろしい色恋営業”【行政処分の対象となった悪質ホストの手練手管とは】
NEWSポストセブン
公務のたびにファッションが注目される雅子さま(撮影/JMPA)
《ジャケットから着物まで》皇后雅子さまのすべての装いに“雅子さまらしさ“がある理由  「ブルー」や小物使い、パンツルックに見るファッションセンス
NEWSポストセブン
小室圭さんと眞子さん(2025年5月)
《英才教育》小室眞子さんと小室圭さん、コネチカット州背景に“2人だけの力で”子どもを育てる覚悟
NEWSポストセブン
アントニオ猪木さん
アントニオ猪木を看取った付き人が明かす「最期の2か月」 “原辰徳の物まねタレント”が猪木を介護することになった不思議な巡り合わせ
週刊ポスト
寄り添って歩く小室さん夫妻(2025年5月)
【ステーキの焼き方に一家言】産後の小室眞子さんを支えるパパ・小室圭さんの“自慢の手料理”とは 「20年以上お弁当手作り」母・佳代さんの“食育”の影響
NEWSポストセブン
不正駐輪を取り締まるビジネスが(CPGのHPより)
《不正駐輪車を勝手にロック》罰金請求をするビジネスに弁護士は「法的根拠が不明確」と指摘…運営会社は「適正な基準を元に決定」と主張
NEWSポストセブン
「子供のころの夢はスーパーマンだった」前田投手(時事通信フォト)
《ワンオペ育児と旦那の世話に限界を…》米国残留の前田健太投手、別居中の元女子アナ妻が明かした“日本での新生活”
NEWSポストセブン
眞子さんと佳子さま(時事通信フォト)
《眞子さん出産発表の裏に“里帰りせず”の深い溝》秋篠宮夫妻と眞子さんをつないだ“佳子さんの姉妹愛”
NEWSポストセブン
田中容疑者の“薬物性接待”に参加したと証言する元キャバクラ嬢でOLの女性Aさん
《27歳OLが告白》「ラリってるジジイの相手」「女性を切らすと大変なんだ…」レーサム創業者“薬漬け性接待”の参加者が明かした「高額報酬」と「異臭漂うホテル内」
週刊ポスト
宮内庁は小室眞子さんの出産を発表した(時事通信フォト)
【宮内庁が発表】眞子さん出産で注目が集まる悠仁さま成年式「9月ならば小室圭さんとともに出席できる可能性が大いにある」と宮内庁関係者
NEWSポストセブン