神木隆之介主演で話題を呼ぶNHK連続テレビ小説『らんまん』。存在感を発揮しているのは松坂慶子演じる主人公(神木)の祖母の存在だ。朝ドラを盛り上げる“祖母力”についてコラムニストのペリー荻野さんが解説する。
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今、朝ドラを支えているのは、たくましき祖母たちの力だ。先週始まった朝ドラ『らんまん』は明治の世を天真らんまんに生きた植物学者・槙野万太郎(神木隆之介)の物語。序盤を引っ張るのは、彼の祖母タキ(松坂慶子)である。
幕末、土佐の由緒ある蔵元「峰屋」の跡取りとして生まれた五歳の万太郎は、少し走っただけで熱を出し、周囲をハラハラさせる病弱の身。夫と万太郎の父である息子を亡くしたタキは、家を切り盛りし、病の床にある母ヒサ(広末涼子)に替わって孫の育成に力を尽くす。
「大奥様」と呼ばれるタキは、大勢の奉公人や酒蔵で働く蔵人たちの前にどーんと立って、「おはよう」「みな、よろしゅう」と挨拶も力強い。祝宴の席で、分家の者たちが万太郎の陰口を言うのを耳にすると、すかさず「分家の分際で何を言うた!」「いらん世話じゃ!!」と広い座敷の端まで聞こえる声でビシッと注意。親戚の言葉に傷つき、家を抜け出した万太郎が、母や姉たちに助けられて戻ってくると、「おまんはそれでも峰屋の当主かね!!」と雷を落とすのだ。24時間腹式呼吸、滑舌バッチリのタキの大音声が物語を引き締める。
前作『舞いあがれ!』でも、ここぞと言う場面では、ヒロイン舞(福原遥)の祖母・才津祥子(高畑淳子)の力が発揮された。長崎・五島列島で暮らす祥子は、舞が空にあこがれるきっかけを作り、登場人物たちを繋いでいく。最終回は、舞の祖母孝行フライトだった。
これまで多くの朝ドラで大声を出していたのは、親父たちだった。沢口靖子主演『澪つくし』(1986年)の津川雅彦、『おんなは度胸』(1992年)の藤岡琢也、堀北真希主演『梅ちゃん先生』(2012年)の高橋克実、波瑠主演『あさが来た』(2016年)の升毅などなど。中には『雲のじゅうたん』(1976年)で、飛行士になると宣言した真琴(浅茅陽子)に「バカもーん!!」と怒鳴りつける明治男の父を演じた中条静夫、『はね駒』(1986年)で、「女学校さ、行かしてください」と言い出した娘りん(斉藤由貴)に驚きながら、「この武士の魂をかけて、おりんを勘当いたす」と意地を通した小林稔侍のように、朝ドラの頑固親父役で一躍人気俳優になった例もあった。