「サステナブルツーリズム」という言葉をご存知ですか? 直訳すると「持続可能な観光」。その地域の自然環境や文化、歴史を守りながら観光業を活性化させ、観光地本来の姿を求めていこうとする考え、および実践のことです。
今回は、沖縄県の石垣市が開催したサステナブル観光のモデルツアー「サステナ島旅ISHIGAKIJIMA」に記者が参加。そこで感じた石垣島の真の姿、新しい旅の形をレポートします。
「サステナ島旅ISHIGAKIJIMA」は、石垣市が企画する3泊4日(または4泊5日)のパッケージツアー。移動手段から宿泊地、ツアー行程の隅々まで「サステナブル」を体験できるようになっていました。
ツアー初日。羽田→石垣島までは「SAF(Sustainable Aviation Fuel)」という燃料を使用した「ANA Green Jet」に乗って移動しました。SAFは二酸化炭素排出量を約80%低減する、新時代の飛行機の燃料。機内のヘッドレストには、ヴィーガンレザーを使用されていたり、機体表面には空気抵抗を少なくして二酸化炭素排出量を削減する加工がなされていたり、環境に優しい工夫が。
石垣島で利用した送迎バスの燃料にも、ユーグレナ社が製造する次世代バイオディーゼル燃料「サステオ」が使用されていました。
宿泊した「石垣島ビーチホテルサンシャイン」は、沖縄県認定「おきなわSDGsパートナー」にも登録されているリゾートホテル。プラスチックごみ削減のためにアメニティをセルフサービスにしていたり、地産地消を推奨していたりといった取り組みが行われています。
特に印象的だったのは、施設全体で光害(=過剰な光で星空が見えづらくなったり、生態系を混乱させるなどの公害のこと)対策を徹底していること。新棟はホテルの照明が外に漏れないような工夫を凝らした設計になっていました。
ホテルには露天風呂付き展望大浴場も併設。満点の星空やサンセットを眺めながら入る露天風呂で、身も心もリラックスできます。時期柄入ることはできませんでしたが、青く美しい海へと続くインフィニティプールもありました。家族や夫婦でのんびりステイしたり、ワーケーションに利用したり…様々な用途で使えそうなホテルです。
<石垣島ビーチホテルサンシャイン>
https://www.ishigakijima-sunshine.net
ツアー2日目は朝から「縄文企画」が主催するビーチクリーン活動へ。実は石垣島を含む八重山諸島全体では、年間約500トンもの海洋ゴミが漂着しています。管理されていないビーチには、ペットボトルや海外の漁具など大きなゴミが溜まりっぱなし。縄文企画は、それらのゴミを拾って新しい製品へと生まれ変わらせる(=アップサイクル)活動を行なっています。
ツアー参加者数十人で30分ほどゴミ拾いしただけで、あっという間にごみの山ができました。ガイドブックに載っているような綺麗なビーチを観光するだけでは気づかない、深刻な海の問題について改めて考える機会になりました。
ゴミ拾いの後は、回収したペットボトルのキャップを再利用してコースターを作るアップサイクルのワークショップにも参加。いろんな色のキャップを高温で溶かし固めて作るので、美しいマーブル模様のコースターができました。
<縄文企画「縄文ツアーズ」>
早朝に海のゴミ拾いを行う「早朝アースクリーンツアー」に参加できる。詳しくはhttps://jomontours.comをご確認ください。
続いて訪れたのは「請福酒造」の工場見学。1949円に創業した歴史ある蔵元では、八重山地方で人気の泡盛「請福」やリキュール、もろみ酢などが作られています。
また、請福酒造といえば自家製芋酒の「IMUGE.(イムゲー)」。元々は琉球王朝時代に、庶民が芋や黒糖で作っていたお酒でしたが、酒税法などにより明治後期に姿を消してしまいました。そんな幻の酒を、請福酒造とほか2社の泡盛製造所が力を合わせて2020年に復刻させたのです。
歴史を継承し、その土地で作られた芋を使って作られる「IMUGE.(イムゲー)」は、サステナブルなお酒と言えるでしょう。
<請福酒造>
オンラインショップで泡盛「請福」や「IMUGE.(イムゲー)」の購入が可能
https://ishigakiseifuku.shop-pro.jp
その日の夜は古民家レストラン「舟蔵の里」へ。石垣島在住の唄者・金城弘美さんの民謡ライブを聴きながら、地産地消のブランド豚「南ぬ(ぱいぬ)豚」を使ったオリジナルのコースメニューをいただきました。
南ぬ豚はパイナップル飼料を食べて育ったアグー豚。一口食べると、上質な脂と甘みが口の中に広がります。ちなみに南ぬ豚が食べるパイナップルは、豚自身の排泄物を肥料として育てられているそう。これを「循環型農業」と呼びます。
<舟蔵の里>
https://www.funakuranosato.com
翌日は石垣島の歴史に触れたいと思い、あざみ屋みんさー工芸館へ。ここでは琉球王朝時代から石垣島に400年以上伝わる「八重山みんさー織」体験をしました。
みんさー織りは1989年に「八重山ミンサー」として国の伝統工芸品に指定された伝統工芸。赤、緑、黄色、青…など鮮やかな色味の糸からなる織物で、五つ玉と四つ玉の絣(かすり)に「いつ(五つ)の世(四)までも末長く…」という思いが込められています。
体験では、織り機を使って「八重山みんさー織」制作の最終工程である「織り」を行いました。縦の糸に横の糸を左右交互に通していく作業で、最初は少し複雑に感じますが、分からないことがあると指導員さんが丁寧に教えてくれ、30分程度でコースターが完成!
<あざみ屋みんさー工芸館>
https://minsah.co.jp
まるで「大人の修学旅行」のようだった3泊4日のサステナ島旅。石垣島の自然や景観を守るために、地域の人々が様々な取り組みを行っていることを改めて知りました。
観光客である私たちも歯ブラシやタオルを持参したり、その土地の食事を意識していただいたり…ほんの少しの心がけで、観光地を守ることに繋がります。これからスタンダードになっていくかもしれない新しい旅の形を、身を以て体験することができる、貴重な機会になりました。
<サステナ島旅ISHIGAKIJIMA>
次回催行日は未定。今後の情報は下記をご確認ください。
https://sasutenashimatabi.com