1985年のつくば科学万博に日立製作所が「回転式レタス生産工場」を出展し注目を集めてから約40年。2009年度以降、政府の後押しを受けて大企業も参入する「植物工場」ブームが到来している。
太陽光型の植物工場に適した野菜の代表格が、豊富な日射量が欠かせないトマトだ。カゴメと電源開発が共同で2005年に設立した「響灘菜園」(本社・北九州市)は、カゴメブランドの生鮮トマトを通年栽培する大規模ハイテク温室を運営。様々な種類のトマトの安定供給に努めている。
同園は土壌病原菌のリスクがある土を使わず、水分含有量などを正確に管理しやすいココ椰子の殻100%の培地で養液栽培する。毎夏、苗を入荷し、10月頃から約10か月間収穫する。
「オランダ発祥の栽培技術を採用したフィルム温室の中で、年間約30万本を育て、約3000トンを出荷します。大きさを揃えたり、植物にとって最もよい状態にしたりするために最先端の生育制御システムを導入し、屋根の外にもセンサーを設置。温度や湿度、潅水などをコンピューターで24時間コントロールしています」(栽培責任者の中村理一係長)
撮影/太田真三 取材・文/上田千春
※週刊ポスト2023年4月21日号