ビジネス

臨海部を走る東京BRT 路線が重なる新地下鉄と共存できるのか

りんかい線の国際展示場駅の前から発着する東京BRTの連節バス。同駅は東京ビックサイトから近く、ゆりかもめの東京ビッグサイト駅や有明駅も至近の距離にある(撮影:小川裕夫)

りんかい線の国際展示場駅の前から発着する東京BRTの連節バス。同駅は東京ビックサイトから近く、ゆりかもめの東京ビッグサイト駅や有明駅も至近の距離にある(撮影:小川裕夫)

 人口減少時代にある日本では、新型コロナウイルスの感染拡大も重なって、各地で路線の廃止や減便など公共交通機関の存続には厳しい状況が続いている。そんななか、東京都の臨海部だけは、2040年までに既存のりんかい線、ゆりかもめにプラスして2024年春に本格運行が始まる東京BRT、2040年までに開業する臨海地下鉄と合計5者の運行が予定されている。どんな見込みで路線増が予定されたのか、ライターの小川裕夫氏がレポートする。

 * * *
 2023年4月1日、東京の臨海部を走る東京BRTがプレ運行(二次)へと切り替わった。東京BRTのBRTとは一般的に耳馴染みのない用語だが、これはバス・ラピッド・トランジットと訳される。

 BRTには明確な定義がないため、各地のBRTはそれぞれ異なったシステムで運行されている。一般的にBRTの特徴を列挙するなら、「定時性」「速達性」「輸送力」の3つが通常の路線バスと異なる点とされる。

 例えば、東日本大震災によって被災したJR東日本の気仙沼線や大船渡線(宮城県・岩手県)は、震災以前から不採算路線だった。そうした事情もあり震災復興では線路をバス専用道へと転換した。これが気仙沼線BRT・大船度線BRTとなる。BRTは線路や駅舎といった大規模な施設・設備を必要としないので、安価で公共交通を再生することができた。

 他方、渋滞に巻き込まれて時間通りに運行できないという路線バスにつきものの問題は、専用道を走ることで解消。定時性と速達性が確保されている。

 気仙沼線BRT・大船度線BRTといった先行例もあり、各地のローカル線をBRTで甦らそうという動きが活発化している。しかし、BRTは必ずしも不採算の鉄道路線を転換するものばかりではない。

 千葉県千葉市の幕張エリアでは、京成バスが連節車と呼ばれるバスを運行。連節車は2台分の車両をくっつけているので、通常の路線バスよりも輸送力が大きい。国土交通省はこの路線をBRTと形容し、BRTの模範生のように扱われる。

 こうした追い風もあり、近年はBRTの導入があちこち検討されている。そして、いち早く東京の臨海部でBRTが導入された。それが東京BRTだ。

 東京BRTには、BRTの特長ともいえる専用道はない。また、使用されている車両の中には連節バスがあるものの、大半は通常の路線バスと同じタイプとなっている。それなのにBRTを名乗る理由は、PTPS(公共車両優先システム)と呼ばれるシステムを導入することで定時性と速達性を確保しているからだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

『マモ』の愛称で知られる声優・宮野真守。「劇団ひまわり」が6月8日、退団を伝えた(本人SNSより)
《誕生日に発表》俳優・宮野真守が30年以上在籍の「劇団ひまわり」を退団、運営が契約満了伝える
NEWSポストセブン
清原和博氏は長嶋さんの逝去の翌日、都内のビル街にいた
《長嶋茂雄さん逝去》短パン・サンダル姿、ふくらはぎには…清原和博が翌日に見せた「寂しさを湛えた表情」 “肉体改造”などの批判を庇ったミスターからの「激励の言葉」
NEWSポストセブン
貴乃花は“令和の新横綱”大の里をどう見ているのか(撮影/五十嵐美弥)
「まだまだ伸びしろがある」…平成の大横綱・貴乃花が“令和の新横綱”大の里を語る 「簡単に引いてしまう欠点」への見解、綱を張ることの“怖さ”とどう向き合うか
週刊ポスト
インタビュー中にアクシデントが発生した大谷翔平(写真/Getty Images)
《大谷翔平の上半身裸動画騒動》ロッカールームでのインタビューに映り込みリポーター大慌て 徹底して「服を脱がない」ブランディングへの強いこだわり 
女性セブン
映画『八日目の蝉』(2011)にて、新人俳優賞を受賞した渡邉このみさん
《ランドセルに画びょうが…》天才子役と呼ばれた渡邊このみ(18)が苦悩した“現実”と“非現実”の境界線 「サンタさんを信じている年齢なのに」
NEWSポストセブン
アーティスト活動を本格的にスタートした萌名さん
「二度とやらないと思っていた」河北彩伽が語った“引退の真相”と復帰後に見つけた“本当に成し遂げたい夢”
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、小泉家について綴ります
《華麗なる小泉家》弟・進次郎氏はコメ劇場でワイドショーの主役、兄・孝太郎はテレビに出ずっぱり やっぱり「数字を持っている」プラチナファミリー
女性セブン
調子が上向く渋野日向子(時事通信フォト)
《渋野日向子が全米女子7位の快挙》悔し涙に見えた“完全復活への兆し” シブコは「メジャーだけ強い」のではなく「メジャーを獲ることに集中している」
週刊ポスト
1966年はビートルズの初来日、ウルトラマンの放送開始などが話題を呼んだ(時事通信フォト)
《2026年に“令和の丙午”来たる》「義母から『これだから“丙午生まれの女”は』と…」迷信に翻弄された“昭和の丙午生まれ”女性のリアルな60年
NEWSポストセブン
6月2日、新たに殺人と殺人未遂容疑がかけられた八田與一容疑者(28)
《別府ひき逃げ》重要指名手配犯・八田與一容疑者の親族が“沈黙の10秒間”の後に語ったこと…死亡した大学生の親は「私たちの戦いは終わりません」とコメント
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問される佳子さま(2025年6月4日、撮影/JMPA)
《ブラジルへ公式訪問》佳子さま、ギリシャ訪問でもお召しになったコーラルピンクのスーツで出発 “お気に入り”はすっきり見せるフェミニンな一着
NEWSポストセブン
渡邊渚さんが性暴力問題について思いの丈を綴った(撮影/西條彰仁)
《渡邊渚さん独占手記》性暴力問題について思いの丈を綴る「被害者は永遠に救われることのない地獄を彷徨い続ける」
週刊ポスト