春ドラマが続々とスタートしているが、ドラマを放送する枠がじわりと増えているのをご存じだろうか。昨年春に続いて今年の春も3枠増えているのだ。テレビ局の思惑とは? そして見えてきた新たな課題についてコラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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木村拓哉さん、天海祐希さん、福山雅治さん、波瑠さん、高畑充希さん、芳根京子さん、橋本環奈さんら豪華な主演俳優がそろった春ドラマの初回放送が次々に行われています。なかでも業界内で注目を集めているのは、今春にスタートする3つのドラマ枠。
日本テレビは金曜24時30分にドラマ枠を新設し、7日に稲森いずみさん主演の『夫婦が壊れるとき』をスタートさせました。次にフジテレビ系列のカンテレが火曜23時にドラマ枠を新設し、18日に桜井ユキさん主演の『ホスト相続しちゃいました』を放送予定。さらにテレビ朝日系列のABCが日曜22時にドラマ枠を新設し、30日に清野菜名さん主演の『日曜の夜ぐらいは…』をスタートさせます。
それぞれ放送曜日が火曜、金曜、日曜、時間帯が22時台、23時台、24時台とバラけているところを見れば、各局が番組表の中で戦略的にドラマ枠を増やしているのは間違いないでしょう。実は昨年の春も、フジテレビが水曜22時、テレビ東京が火曜24時30分、TBSが火曜24時58分からのドラマ枠を新設していました。2年連続で3つものドラマ枠が増えているのです。
すでに地上波には約30ものドラマ枠があったにもかかわらず、なぜ増え続けているのでしょうか。また、それによりどんな状況が生まれているのでしょうか。
配信ビジネスの切り札として期待大
2年連続でドラマ枠が増え続けているのは、「各局で“連続ドラマ”というコンテンツがそれだけ期待されているから」に他なりません。ではなぜ期待されているのか。
その理由は、連続ドラマが配信収入を得やすいコンテンツだから。これまでテレビ局が手がけるコンテンツの中で連続ドラマは配信再生数のランキング上位を占めてきました。
ネットを含むコンテンツ競争の激化やビデオ・オン・デマンドの普及で以前より視聴率獲得が難しくなり、CMによる放送収入が減る中、テレビ局にとって配信収入の確保は重要課題の1つ。その点、連続ドラマはTVerなどの無料見逃し配信でネット広告収入が期待できるだけでなく、自社系動画配信サービスの有料会員誘致につながり、Netflix、Disney+、Amazonプライム・ビデオなどによる海外配信での収入も狙えるなど、映画化やイベントなどへの展開も含め、収入面での期待が大きいのです。
ただそうは言っても、まだまだ放送収入が占める割合のほうが圧倒的に高いだけに、ゴールデン・プライム帯のドラマはコア層(主に13~49歳)の個人視聴率獲得が必要。そのためドラマ枠はそれを得るのが難しい19時台と20時台ではほとんど放送されず、21時台と22時台に集中していて、その上で配信再生数も稼げるドラマを制作しようとしているのです。