スポーツ

高校野球のサイン盗み問題 高野連は監督のスマートウォッチを規制すべきではないか

「サイン盗み」はルールで禁止されているが……(写真はイメージ。画像・PIXTA)

「サイン盗み」はルールで禁止されているが……(写真はイメージ。画像・PIXTA)

 高校野球の世界に今なお残っているのではないかと指摘されることが多い問題が「サイン盗み」だ。捕手が投手に出すサインを二塁走者らが盗み見て伝達する行為は、日本高野連が1999年春のセンバツから禁止している。しかし、令和の高校野球にも残存しているのではないか。ノンフィクションライター・柳川悠二氏が関係者の証言を追った。【前後編の後編。前編から読む

 * * *
 サイン盗みの問題について、私が話を聞いたベテラン指導者は、走者やランナーコーチというベンチ入りメンバー以外が関与しているケースもあると証言した。その人物とは、ファウルボールやブルペンでの投球練習中に悪送球などが起きた時にボールを拾うボールボーイ(昨夏よりボールパーソンに名称変更)だ。ボールボーイは各校のベンチ外のメンバーから3人選ばれ、2人がベンチ脇、もう1人が外野に備え付けられた椅子に座って備えている。

 ベテラン指導者が話す。

「まず捕手が投手にサインを出す。それを見たショートやセカンドが、今度は外野手に向かってサインを送る。よく、内野手がグラブを持っていないほうの手をお尻に回してサインを出しているシーンがありますよね? あれは外野手に球種を伝えているんです。ただ、外野からは細かい手の動きが見えなかったりするから、ストレートならグー、変化球ならパーと、より簡潔なサインで伝えるのが一般的。それをボールボーイが見て、打者に伝達するのです」

 本来、試合の進行を補助するボールボーイが試合に関与するというのならば、そのサイン盗みは監督や部長、コーチらを含めたチームぐるみで行っているということだろう。

 現役時代に名門校でプレーした指導者も、その証言を補足する。

「椅子に座っているボールボーイの膝が閉じていたらストレート、開いていたら変化球というように、ボールボーイからサインを伝達するとは聞いたことがあります。当然、ボールボーイは自分たちのベンチ側にしかいない(相手ベンチ側のボールボーイは相手校の選手が務める)。ベンチが三塁側で、右打者であれば、レフトにいるボールボーイの動きは目視できませんよね。その場合は、レフトにいるボールボーイの動きを、一塁のランナーコーチが確認して、打者に伝達するんです。

 コーチボックスを示す白線を踏んでいたらストレート、踏んでいなかったら変化球というような具合だとか。ただ、いきなり、ボールボーイからランナーコーチ、打者へと伝達しようと思ってもできるはずがありません。普段の練習から、わざわざ時間を割いて、サイン盗みの練習を行うこともあったそうです」

 ただし、そうしたサイン盗みの実態は知りつつも、この指導者は自らサイン盗みを高校生に指示することは絶対にない、と断言する。

「サイン盗みが横行しているのは事実です。ストレートをイチ、ニのサンでドッカーンと打たれたかと思えば、次の打者が変化球を完璧なタイミングでとらえたりすると、サインが盗まれているのかなと疑います。ストレートか、変化球か、事前に分かっていたら、結果は雲泥の差です。でも、打者の中には、球種を伝えられることで集中力がそがれて、かえって打てないと話す選手もいるんです。

 一方で、センターが右に動くのか、左に動くのかで走者が球種を推測し、変化球だと予測できたら盗塁を試みる。こういったプレーは純粋に野球の技術ですよね。だけど、第三者が打者にサインを伝達する行為はやはり、私はアンフェアだと思います」

 春夏の甲子園に出場する学校は、抽選会が終わると、対戦校の情報収集に東奔西走する。以前、私が聞いた監督は、対戦校の地元の関係者から「サイン盗みに気をつけろ。あの学校はアルプスからもサインを伝達する」という情報を得ていたと振り返った。

 また別の監督は、相手校のビデオを観る中で、「走者がいない場面と走者を背負った場面でサインに変更があるか。あるいはイニング毎にサインを変えているかどうかを確認する」と話し、こう続けた。

「球場では基本的に背後からしか試合を見られませんから、相手捕手のサインを確認することは難しい。全国中継される甲子園はもちろん、最近では地方大会も多くの試合がバーチャル高校野球で試合が放送されるため、バックスクリーンからの映像で相手捕手のサインを研究できる。そういった意味では、サイン盗みは行いやすい時代とも言えます」

関連記事

トピックス

世界中でセレブら感度の高い人たちに流行中のアスレジャーファッション(左・日本のアスレジャーブランド「RUELLE」のInstagramより、右・Backgrid/アフロ)
《広瀬すずもピッタリスパッツを普段着で…》「カタチが見える服」と賛否両論の“アスレジャー”が日本でも流行の兆し、専門家は「新しいラグジュアリーという捉え方も」と解説
NEWSポストセブン
浅香さんの自宅から姿を消した内縁の夫・世志凡太氏
《長女が追悼コメント》「父と過ごした日々を誇りに…」老衰で死去の世志凡太さん(享年91)、同居するスリランカ人が自宅で発見
取締役の辞任を発表したフジ・メディア・ホールディングスとフジテレビ(共同通信社)
《辞任したフジ女性役員に「不適切経費問題」を直撃》社員からは疑問の声が噴出、フジは「ガバナンスの強化を図ってまいります」と回答
NEWSポストセブン
子宮体がんだったことを明かしたタレントの山瀬まみ
《“もう言葉を話すことはない”と医師が宣告》山瀬まみ「子宮体がん」「脳梗塞」からの復帰を支えた俳優・中上雅巳との夫婦同伴姿
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《12月1日がお誕生日》愛子さま、愛に包まれた24年 お宮参り、運動会、木登り、演奏会、運動会…これまでの歩み 
女性セブン
海外セレブの間では「アスレジャー
というファッションジャンルが流行(画像は日本のアスレジャーブランド、RUELLEのInstagramより)
《ぴったりレギンスで街歩き》外国人旅行者の“アスレジャー”ファッションに注意喚起〈多くの国では日常着として定着しているが、日本はそうではない〉
NEWSポストセブン
虐待があった田川市・松原保育園
《保育士10人が幼児を虐待》「麗奈は家で毎日泣いてた。追い詰められて…」逮捕された女性保育士(25)の夫が訴えた“園の職場環境”「ベテランがみんな辞めて頼れる人がおらんくなった」【福岡県田川市】
NEWSポストセブン
【複雑極まりない事情】元・貴景勝の湊川親方が常盤山部屋を継承へ 「複数の裏方が別の部屋へ移る」のはなぜ? 力士・スタッフに複数のルーツが混在…出羽海一門による裏方囲い込み説も
【複雑極まりない事情】元・貴景勝の湊川親方が常盤山部屋を継承へ 「複数の裏方が別の部屋へ移る」のはなぜ? 力士・スタッフに複数のルーツが混在…出羽海一門による裏方囲い込み説も
NEWSポストセブン
アスレジャースタイルで渋谷を歩く女性に街頭インタビュー(左はGettyImages、右はインタビューに応じた現役女子大生のユウコさん提供)
「同級生に笑われたこともある」現役女子大生(19)が「全身レギンス姿」で大学に通う理由…「海外ではだらしないとされる体型でも隠すことはない」日本に「アスレジャー」は定着するのか【海外で議論も】
NEWSポストセブン
中山美穂さんが亡くなってから1周忌が経とうとしている
《逝去から1年…いまだに叶わない墓参り》中山美穂さんが苦手にしていた意外な仕事「収録後に泣いて落ち込んでいました…」元事務所社長が明かした素顔
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)(Instagramより)
《俺のカラダにサインして!》お騒がせ金髪美女インフルエンサー(26)のバスが若い男性グループから襲撃被害、本人不在でも“警備員追加”の大混乱に
NEWSポストセブン
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏の人気座談会(撮影/山崎力夫)
【江本孟紀・中畑清・達川光男座談会1】阪神・日本シリーズ敗退の原因を分析 「2戦目の先発起用が勝敗を分けた」 中畑氏は絶不調だった大山悠輔に厳しい一言
週刊ポスト