国内

国内酪農家は減産を強いられるのに、乳製品の輸入は続く矛盾 深刻な“牛乳危機”の可能性も

海外では「ホルモンフリー」を求める消費者が増えている(EPA時事)

海外では「ホルモンフリー」を求める消費者が増えている(EPA時事)

「酪農家の85%が赤字、離農検討は6割」──3月18日、業界専門紙『日本農業新聞』が、衝撃的な数字を報じた。いま、日本の酪農が危機に瀕している。品質も味もたしかな乳製品が日本国内で作られているのに、このままではスーパーに並ぶ乳製品は危険なものばかりになってしまう可能性があるのだ。

 日本の乳製品生産の現場は大きな矛盾を抱えている。“牛乳余り”の状況となり、毎日数トンほどの生乳を廃棄している酪農家もあるというのだ。にもかかわらず、海外からの乳製品の輸入量は高止まりしたままだ。海外からの輸入を続けることは国内酪農家の経営を追い込むだけでなく、私たちの健康への影響も考えられる。東京大学大学院農学生命科学研究科教授の鈴木宣弘さんは言う。

「日本やEUでは認められていませんが、アメリカなど世界の約20か国では乳牛にボバインソマトトロピン(BST)という合成ホルモン剤を投与することが認められている。牛の成長を早め、乳量を増やす目的で与えるものですが、牛乳に含まれるインスリン様成長因子-1(IGF-1)という物質が増加し、飲むと乳がんや前立腺がん、大腸がんなど、がんのリスクが増加すると問題視されています」(鈴木さん、以下同)

 BST使用牛は乳房炎になりやすい傾向にあり、対策として抗生物質が与えられるが、それが牛乳に移行することも確認されている。

「1998年に科学誌『ランセット』や『サイエンス』で、乳がんは7倍、前立腺がんも4倍罹患リスクが上がるという調査結果が出て、アメリカではBST使用牛乳の不買運動が起こりました。スターバックスやウォルマートなど大手飲食店やスーパーも不使用宣言をするなど大きな動きになったのです」

 価格が高くとも「BST不使用」「ホルモンフリー」と記載のあるものが選ばれ、ホルモン剤入り牛乳はアメリカの市場からほぼ淘汰された。しかし、いまでもアメリカの20%ほどの乳牛にBSTが投与され続けている。その搾られた牛乳は、どこにいくのか。

「日本です。アメリカ産のバターやチーズ、脱脂粉乳などはBST使用牛の乳が入っている可能性がある。日本では輸入乳製品のBSTチェックはされておらず、完全に“ザル”といっていい。すでにどんどんアメリカからの“ホルモン剤入り乳製品”が入ってきていると考えるべきです」

関連記事

トピックス

2011年に放送が開始された『ヒルナンデス!!』(HPより/時事通信フォト)
《日テレ広報が回答》ナンチャン続投『ヒルナンデス!』打ち切り報道を完全否定「終了の予定ない」、終了説を一蹴した日テレの“ウラ事情”
NEWSポストセブン
青森県東方沖地震を受けての中国の反応は…(時事通信フォト)
《完全な失敗に終わるに違いない》最大震度6強・青森県東方沖地震、発生後の「在日中国大使館」公式Xでのポスト内容が波紋拡げる、注目される台湾総統の“対照的な対応”
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
《名古屋主婦殺害》「あの時は振ってごめんねって会話ができるかなと…」安福久美子容疑者が美奈子さんを“土曜の昼”に襲撃したワケ…夫・悟さんが語っていた「離婚と養育費の話」
NEWSポストセブン
卓球混合団体W杯決勝・中国-日本/張本智和(ABACA PRESS/時事通信フォト)
《日中関係悪化がスポーツにも波及》中国の会場で大ブーイングを受けた卓球の張本智和選手 中国人選手に一矢報いた“鬼気迫るプレー”はなぜ実現できたのか?臨床心理士がメンタルを分析
NEWSポストセブン
数年前から表舞台に姿を現わさないことが増えた習近平・国家主席(写真/AFLO)
執拗に日本への攻撃を繰り返す中国、裏にあるのは習近平・国家主席の“焦り”か 健康不安説が指摘されるなか囁かれる「台湾有事」前倒し説
週刊ポスト
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン
パーキンソン病であることを公表した美川憲一
《美川憲一が車イスから自ら降り立ち…》12月の復帰ステージは完売、「洞不全症候群」「パーキンソン病」で活動休止中も復帰コンサートに懸ける“特別な想い”【ファンは復帰を待望】 
NEWSポストセブン
「交際関係とコーチ契約を解消する」と発表した都玲華(Getty Images)
女子ゴルフ・都玲華、30歳差コーチとの“禁断愛”に両親は複雑な思いか “さくらパパ”横峯良郎氏は「痛いほどわかる」「娘がこんなことになったらと考えると…」
週刊ポスト
話題を呼んだ「金ピカ辰己」(時事通信フォト)
《オファーが来ない…楽天・辰己涼介の厳しいFA戦線》他球団が二の足を踏む「球場外の立ち振る舞い」「海外志向」 YouTuber妻は献身サポート
NEWSポストセブン
海外セレブも愛用するアスレジャースタイル(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
「誰もが持っているものだから恥ずかしいとか思いません」日本の学生にも普及する“カタチが丸わかり”なアスレジャー オフィスでは? マナー講師が注意喚起「職種やTPOに合わせて」
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「旧統一教会から返金され30歳から毎月13万円を受け取り」「SNSの『お金配ります』投稿に応募…」山上徹也被告の“経済状況のリアル”【安倍元首相・銃撃事件公判】
NEWSポストセブン