例年以上に暖かい春になる──今年2月に気象庁が発表したとおり、連日汗ばむほどの陽気が続いている。穏やかな気候の中、「着用は個人の自由」になって1か月以上経ったいま、マスクを取って、素顔にTシャツ一枚で外に飛び出したいところだが、悩みを抱える人も少なくない。
神奈川県に住む主婦のAさん(57才)が打ち明ける。
「マスクを着ける生活が長かったせいか、自分の口のにおいが気になってしまうんです。外してもよくなったし、着けていると暑くて蒸れるのに、周囲に“臭い”と思われたらどうしよう、と気になりマスク生活を継続しています。友達と外食しながらおしゃべりをしていても気が気じゃなく、せっかくコロナ禍が明けたのに、気分は晴れません」
口臭治療に詳しい中城歯科医院院長で『スマホがあなたをブスにする』(大和出版)の著書がある中城基雄さんによれば、佐藤さんのようにコロナ禍を経て口臭に悩む人が増えているという。
「新型コロナがまん延し、“巣ごもり生活”を余儀なくされる人が増えているのに比例して、『自分の口が臭いのではないか』と患者から相談が来るケースが増えています」
アフターコロナに伴う口臭の大きな要因の1つは、マスクにある。
東陽町歯科医院院長の大谷直さんが言う。
「マスクを着けると息苦しさを感じて無意識のうちに鼻呼吸から口呼吸に移行します。すると口腔内が乾燥し、細菌が繁殖して口臭が発生しやすくなる。唾液には自浄作用や、さまざまな菌を洗い流す役割があり、減少すれば口臭につながるのは自明です」
また、大谷さんによればにおいのもとがマスク自体にあるケースもあるという。
「マスクを長時間着用したままおしゃべりや会議をするなどの日常生活を続けると、唾液に含まれる細菌が繁殖してマスクに付着し、悪臭が発生します。マスク自体をマメに交換することが1つの解決法ですが、感染が落ち着いてきたことやおしゃれで単価の高いマスクが流行していることなどが理由で、毎日交換する人が減っている。すると、どうしてもマスク自体ににおいが付着してしまう。交換できないならば、マスクカバーを装着するなど対策を考えた方がいいでしょう」
中城さんもマスク由来の悪臭が存在すると声を揃える。
「口臭治療の相談に来た人の中で『仕事中マスクをするときに、酸っぱいようなにおいを感じる』と訴える患者さんがいました。調べてみると、彼が感じたにおいは、自分自身の口臭ではなく、マスクにもともと付着している薬品のにおいであることがわかった。使い捨てマスクは製造過程で殺菌処理をするのですが、その際に酢酸などを染み込ませて安全性を確保することがある。3時間以上マスクを着けていると、そのにおいと唾液や菌が混じり合ってさらなる悪臭が発生する。マスクは“2度におう”のです」
※女性セブン2023年5月4日号