頭部MRI検査、通称「脳ドック」には様々な意見も(イメージ)
年に一度の「健康診断」の結果を見て一喜一憂する人は多いだろう。しかし、健康診断のなかには、その精度に疑問が残るものもある。健康診断で気をつけたいのが心電図検査。秋津壽男医師(秋津医院院長)は心疾患を見つけるには不十分だと言う。
「自治体の健康診断で心疾患を直接的に調べる唯一の検査が心電図です。心臓のリズムが乱れる不整脈を見つけやすいとされますが、不整脈や狭心症の発作が起きていない時の心電図は、正常を示して終わります。また、心電図で見つかる心筋梗塞は偽陽性が多いとされる。心疾患そのものを見つけるには不十分です」
仮に心疾患などの疑いがあって調べるなら「心臓MRI検査」が有効だと秋津医師は言う。
「心電図では血管の状態が把握できませんが、心臓MRIなら血管の狭くなっている部分まで立体的に見ることができ、狭心症や心筋梗塞にいたる前の血流の低下も発見できます。心臓CTに比べて身体への侵襲もなく、心筋梗塞や心不全の予防に役立つ可能性が高い」
脳梗塞やくも膜下出血を調べるための特別な検査が頭部MRI検査、通称「脳ドック」だ。脳の断面を撮影し、鮮明な画像で見ることができる。同検査についてナビタスクリニック川崎の谷本哲也医師は「何らかのリスク因子や症状がある人以外は検査の意義が高いとは言えない」と指摘する。
「リスク因子や症状がなく検査した場合でも、数mm程度の小さな動脈瘤が見つかる人はいますが、見つけたところで経過観察をする以外に方法がない。特段の問題がない人の頭部MRI検査は、脳の状態を撮影する以上の意味はあまりない」
検査費用も自費で2万円台と高額だが、「生活習慣病を発症している場合は脳卒中のリスクが高まるので一度は受けておいたほうが良い」(秋津医師)という意見もある。
谷本医師は、「大前提として、検査は一長一短があります」と語る。
「身体は個人差が大きいため、がん家系や年齢、生活習慣などのリスク因子によって毎年受けたり、数年おきにしたりと、個別化した判断が必要になる。何の病気もなく元気な人であれば、無闇に検査はしなくていい。その判断を誤らないことも大事です」(谷本医師)
まずは自らの不安要素の検証が必要だ。
※週刊ポスト2023年4月28日号