マスク生活が長引くなかで、自分口臭が気になるという人も多いかもしれない。その口臭の原因として「スマホの使用がある」と指摘するのは、口臭治療に詳しい中城歯科医院院長で『スマホがあなたをブスにする』(大和出版)の著書がある中城基雄さんだ。
「口臭の増加にはステイホームに伴う生活環境の変化やストレスなどさまざまな要素があると推測されますが、私がいちばんの原因だと考えているのはスマホです」
確かにスマホの利用時間は増加傾向にあり、今年1月にMM総研が発表した調査によれば、1週間あたりの平均利用時間は19時間にのぼるという。しかし、いきなり「スマホのせいで口臭になる」といわれてもピンとこない人も多いはずだ。
中城さんの説明を聞こう。
「口臭の大きな原因は口の中が乾くことですが、スマホと口腔内の乾燥には大きな相関関係がある。
まず、スマホを操作していると視線が自然と下向きになり、うつむいた状態になります。すると唾液を分泌する『顎下腺』や『舌下腺』が圧迫され唾液の分泌量は減少します。そのうえ、前傾姿勢のまま体が固まれば過緊張状態が生まれ、自律神経が乱れて人体の動きをスムーズに保つ働きが抑制されて、さらに唾液が出づらくなる。
加えて、スマホでSNSやLINEに没頭することで人との会話が減って表情筋や口輪筋の動きが滞る人も多い。スマホを使うほどに口の中はどんどん乾いていきます」(中城さん・以下同)
スマホを使っているときに、もう一方の手で顎から首元にかけての部位に触れてみよう。首がカチカチに固まって、すくむような姿勢になっていることがわかるはずだ。
「その姿勢が長時間続くと、顎の開け閉めを司る『咬筋』が下顎骨の重さに耐えられなくなり、無意識のうちにポカンと口が開いた状態になって、口呼吸に移行します。
それも口腔内が乾燥して、口臭が生じる大きな原因になります」
これは決して理論上のみの話ではない。中城さんの行った実験からもスマホを長時間利用するほどに口臭が強くなることが確かめられている。
中城さんが被験者にスマホゲームに集中してもらい、開始後から30分間隔で口臭測定器を使って口臭レベルを測定した結果、30分で口腔内の口臭の原因物質「硫化水素」の量がぐんと増え、1時間が経過すると肩が触れ合う程度の距離でもわかるくらいの高い臭度が検出されたという。
「被験者は歯磨き習慣がしっかりあったうえ、実験開始時には人間の嗅覚で判別可能な濃度の半分しか硫化水素濃度がなかったにもかかわらず、この結果でした。実験をした私も、スマホひとつでここまで臭気レベルが急上昇するとは思っておらず、驚かされました。特に年齢を重ねると唾液量が減っていくため、40才を超えてスマホをよく使っている人は口臭が出やすいことを意識してほしい」
※女性セブン2023年5月4日号