日本中で人手不足だと言われて、ずいぶん経つ。その状況は、改善するどころか悪化しているようにも思われる。特に物流業界では、トラック運転手の時間外労働の上限規制が2024年4月から適用されることもあって、深刻な事態が予想されている。また飲食や小売も時間外労働の割増賃金を中小零細企業にも適用する労働基準法が改正された。俳人で著作家の日野百草氏が、人手不足の現場で働く人たちの本音を聞いた。
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3月13日から新型コロナ対策としてのマスクの着用が「個人の判断」に委ねられた。そして4月1日から学校教育の現場でマスクの着用を求めないとし、いよいよ5月8日から新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけがインフルエンザなどと同じ「5類」に移行する。着々と日本社会が「ウィズコロナ」へ向かう中、すでに「人手不足」はコロナ禍から顕在化していた。
「会社や人にもよるが、これからドライバーの争奪戦が始まると思う。いまだに『代わりはいくらでもいる』とは時代の流れのわかっていない会社や経営者だと思う」
特殊輸送サービスに携わるベテランドライバーから話を聞く。筆者は以前からこの物流、運送業界をむしばむ倫理の欠如、「代わりはいくらでもいる」を問題にしてきた。これまでこの業界では「代わりはいくらでもいる」から低賃金で運べ、重労働でも文句を言うな、タダ働きでサービスしろ、がまかり通ってきた。それは他の業界でも数多く見られるであろう、日本の病理でもある。
「とくに特殊輸送となると運べる『プロ』は限られるが、そうでなくともドライバー不足は深刻だ。2024年問題でガラリと変わると思う」
「2024年問題」とは時間外労働の上限規制、時間外労働の割増賃金引上げ、勤務間インターバル制度などの働き方改革が物流、運送業界にも及ぶことにより引き起こされるであろう問題を指す。それまで低賃金で運べ、重労働でも文句を言うな、タダ働きでサービスしろといった荷主や経営者、個人客の無茶振りが通用しなくなるとされる。実効性はともかく、すでに社会問題化していることは報道の通りである。
「例の食肉センターと同じようなことが起きるのでは。これからは代わりなんていないと思ったほうがいい」
命を削るような運転を日々させられるのに見合わない
沖縄県宮古島市の食肉センターで3月18日から牛や馬の処理および出荷ができない状態が続いている。そのきっかけはセンターで唯一、大型家畜を処理できる技術をもった嘱託職員が退職してしまったことにある。非正規ということで契約更新だったが、更新でボーナス無しの新契約となることに対して、職員は契約を更新せず「退職」を選んだ。これによりセンターの機能は麻痺、同センターの職員を改めて教育し、技術を習得させるとしたが、それがいつになるかはわからない状態だと報じられた。