北朝鮮北東部の咸鏡北道で、「脱北して韓国に亡命した子供に電話したのは違法」として、北朝鮮当局が電話をかけた母親ばかりでなく一家4人全員を逮捕し、思想改造のため強制収容所に送り込んだことが明らかになった。脱北者と連絡を取り合うことは違法だが、このような処置を受けるのは従来、電話をかけた本人だけで、家族全員の収容所送りは極めて異例だという。
この背景には、金正恩朝鮮労働党総書記が最近、「脱北を厳重に取り締まり、脱北した家族にも厳しく対応せよ」との指示を出したことがあるという。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じている。
北朝鮮では、韓国に逃れた家族と連絡を取り合うことは違法とされているが、中国との国境付近では中国の通信ネットワークを利用して、携帯電話で連絡を取り合うことは可能だ。
これまでは、仮に発覚しても、ほとんどの場合、警察に賄賂を渡して目をつぶってもらうことができた。また、それがうまくいかなくても、逮捕されるのは電話をかけた本人だけであることがほとんどだった。
ある咸鏡北道の住民はRFAに話したところでは、国境に近い地域では、韓国との電話を接続した罪で逮捕される事件が時々起きているが、家族全員が連行されるのは今回が初めてだという。
母親は自宅から離れたところで電話をかけていたが、地元の警察が見つけて逮捕。その後、数人の警官が自宅に行き、子供ら3人を逮捕し、住民が見守る中、手錠をかけて警察署に連行していったという。住民らからは「見せしめのようなやり方ではないか」との声がでているという。
このような厳しい取り締まり体制は金氏が最近、「脱北者は我々の仲間ではない。徹底して取り締まらなければならない」などと発言したことも影響している。一方で北朝鮮経済は困窮しており、市民の苦境は深まるばかりのようだ。