書店の苦境のなかで、オウンドメディアの成功事例
「書店ゼロ」の自治体(市区町村)が全国で26.2%にのぼるなど(出版文化産業振興財団調査)、書店の減少が続いている。背景には人口減少や雑誌売り上げの減少、ネット書店の広がりなど複数の要因が絡み合い、全国の書店数はこの10年で約3割も減少した。リアルな新刊書店での<本との出会い>の機会が失われていくことを、業界のみならず社会としてどう考えていくのか。書店業界から国への支援を求める声も挙がる中、横浜を中心に展開する老舗書店「有隣堂」の取り組みが注目されている。YouTubeを活用した「ファン作り」だ。
創業113年の有隣堂は2020年にYouTubeチャンネル<有隣堂しか知らない世界>を開設し、現在、登録者数23万人。週1回、火曜日に動画を公開し、第2、第4木曜に生配信も行う 。チャンネルMCを務める 「R.B.ブッコロー」(毒舌が人気のミミズクのキャラクター)のグッズが販売され、YouTube発の人気商品が生まれるなど、実売にもつながる人気チャンネルに育った。その舞台裏を綴った『老舗書店「有隣堂」が作る企業YouTubeの世界』(有隣堂YouTubeチーム著、ホーム社)が2月に発売され、版を重ねている。
有隣堂のYouTubeは、昨今注目される「オウンドメディア」の一つの成功例ともいえる。しかしYouTubeに参入する企業あるいは個人が増えていくなかで、登録者数や再生回数を増やすのは容易ではない。なぜ有隣堂は人気チャンネルになったのか。