公称信者数1100万人、総資産2000億円ともいわれた巨大宗教団体「幸福の科学」の大川隆法・総裁が急逝したのは3月2日のことだった(享年66)。大川家の巨額遺産や教団総裁は誰が継承するのか──。訃報が出た直後から取り沙汰されたが、教団はそもそも大川氏の死を正式に発表していない。
宗教法人法では代表役員やその代務者が1年以上にわたって欠けているときは解散命令の対象(81条)となる。教団の後継者として有力視されているのは、後妻で総裁補佐を務める紫央氏だ。紫央氏は大川氏と同郷の徳島県出身の2世信者で、日本銀行に勤務した後、2009年に幸福の科学の職員に転じてからは異例のスピード昇進を遂げ、27歳だった2012年に29歳年上の大川氏と結婚した。
大川氏の長男で現在は教団を離脱している宏洋氏は本誌・週刊ポスト(2023年3月24日号)の取材で、後継者について「もう紫央さんしかいない」としながらも、紫央氏は霊言ができないため「大川隆法の霊言を伝えることができない紫央さんには幸福の科学を率いることはできないことになる」と語っていた。
幸福の科学は創始者である大川総裁が、事務方トップとなる代表役員も務めていた。教団運営はすべて大川氏が1人で判断して動かしていただけに、宗教法人法で規定されている代表役員には誰かを据えて、「総裁」の地位は空いたままにするのではないかとみられている。
教団の後継者は誰になるのか。文化庁宗務課は「幸福の科学の代表役員の変更届が出ているとは聞いていません。代表役員の変更があった場合は、まず登記の変更を行なった上で、宗務課に変更の届け出をすることになっています」という。幸福の科学の法人登記を法務局で確認すると、「4月13日に変更の届け出があり、登記書き換え中です」とのことで、まさに代表役員の変更登記をしている最中のようだ。
幸福の科学といえば“霊言本”や「法シリーズ」と呼ばれる大川氏の著作でベストセラーを連発してきたが、3月中旬以降は大川氏による新刊の発表も途絶えている。
幸福の科学に、新たな代表役員や総裁には誰が就くのか、霊言本などの発表予定の有無、さらに大川氏の死去について公式見解を訊いたが、すべて「お答え致しません」(広報局)との回答だった。
いまだ時は止まったままのようだ。
※週刊ポスト2023年5月5・12日号