日本古来、伝統的な調味料であるしょうゆやみそ、便利で身近なレトルト食品やコンビニグルメ、スナック菓子。さらには乾麺や缶詰、粉末スープまで、いまやあらゆるジャンルから「減塩商品」を選ぶことができ、「減塩生活」はすっかり日本人の生活に定着した。
パッケージに書かれた塩分含有量を必ずチェックするという人も少なくないだろう。
減塩ブームは日本だけのものではなく、いまや世界的な傾向となっている。根底にあるのは世界保健機関(WHO)が示すガイドラインだ。
「塩分の過剰摂取によって血圧が上がり、血圧が上がると心筋梗塞や脳卒中になり、死に至る」という見解から、塩分は完全に悪者にされ、成人の塩分摂取量として1日あたり5g未満という指針を示している。
日本でもこれをもとに、厚生労働省が成人男性で1日7.5g未満、女性で6.5g未満という数値目標を設定しているが、この数値について「まったくあてにならない」と、内科医の大脇幸志郎さんは断言する。
「WHOの目標と日本の基準には約2%の差がありますが、それは明確な研究データがないからです。厚生労働省の調査によると、日本人は現状で1日あたり9~10gの塩分を摂取しており、WHOの目標を達成しようとすると約半減させなくてはなりません。食べているものをすっかり置き換えるような対策が必要です。つまり、達成が不可能な現実味のない目標なのです」
加えて、日本人はもともと、塩分を多く摂取してきた歴史があるというのは、『最新医学データが導き出した 薬・減塩に頼らない血圧の下げ方』著者で山口醫院院長の山口貴也さんだ。
「日本人はかつて塩分を17~20g、地域によってはもっと多く摂取していた時代もあります。肉や魚を塩漬けにして保存したり、漬けものなどの食文化があったので、塩分摂取量が多かったのです。それでも日本は世界的な長寿国でした。
かつての食生活から比較すれば日本人の塩分摂取量は約半分になり、圧倒的な減塩が達成済みといえます」
それなのになぜ、いまもなおこれほどまでに減塩が求められるのか。それは、減塩にさまざまな健康効果が期待されているからだ。
具体的には、高血圧症を改善し、高血圧による不調の改善が期待されるほか、腎機能の低下や脳卒中、心臓病、骨粗鬆症などのリスク軽減への期待などが挙げられる。
日本高血圧学会も《高血圧の治療においては食塩制限が重要で、日本高血圧学会は1日6g未満を推奨しています。食塩と高血圧の関係はよく知られていますが、食塩摂取量が非常に少ない地域では高血圧の人はみられず、加齢に伴う血圧上昇もほとんどないことが示されています》としたうえで、《食塩制限は、正常血圧の人にとっても、高血圧の予防のために意義が大きいと考えられます。日本では塩分の摂取がまだ多い》と指摘。
高血圧にならないためには塩分を控える必要がある、という理屈だ。