この春、日本テレビが行った朝の情報番組の編成が注目を集めている。それは「『ZIP!』を1時間延長し、『DayDay.』を朝9時スタートさせる」というもの。それにより、他局の情報番組がスタートし、視聴者のチャンネルが変わるタイミングである朝8時に日テレは『ZIP!』の放送を続けている。この“8時またぎ”問題を『ZIP!』はどんな企画で対抗しているのか。テレビ解説者でコラムニストの木村隆志さんが解説する。
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今春に行われた各局の番組改編で、業界内を最もザワつかせたのは日本テレビの朝番組でした。『スッキリ』の終了は以前から噂話があり、他局でも考えられるものでしたが、「『ZIP!』を1時間延長し、新番組の『DayDay.』を9時スタートさせる」という編成に驚かされたのです。
これまでNHKを含む主要局は、「8時までに番組を終え、次の番組を放送する」という形で一致していただけに、まさに異例の編成。私自身、実際に各局のテレビマンから「8時で番組が変わるという視聴習慣が定着している中、日テレは大丈夫なのか?」「『ZIP!』は延長した1時間で何をやるのか?」「『思い切ったな』と思うし、『抜けがけみたいでずるいかな』とも思う」などの声を聞きました。
『ZIP!』が1時間延長されたことによって新たに発生するのが、「8時またぎ問題」。他局が次の番組に移る中、『ZIP!』だけは続行するだけに、「チャンネルを変えられないように何を放送して視聴者を引きつけるか」が重要になります。
ただでさえ8時は高視聴率を獲得し続けるNHKの朝ドラがあるため民放各局の情報番組は、「ニュースをランキング形式で紹介」「独自のスクープネタ」「MCのオープニングトーク」「動物の癒し映像」など、さまざまな工夫を凝らしてきました。
『ZIP!』は、そんな激戦の8時またぎにどんなものを選んでいるのでしょうか。
大谷翔平+WBCメンバーで勝負
ここまで『ZIP!』の8時またぎに採用されているのは、さまざまなニュースを紹介する「ALL TOPICS」というコーナー。つまり、「そのとき最も視聴者を引きつけられそう(チャンネルを変えられなさそう)なニュースを日替わりで選べる」という制作サイドにとって王道かつ便利な構成です。
では、具体的に8時またぎの瞬間は、どんなニュースを選んでいたのでしょうか。
3日(月)―大谷翔平選手 4日(火)―歌舞伎町コンセプトカフェ摘発 5日(水)―大谷選手 6日(木)―大谷選手 7日(金)―大谷選手 10日(月)―大谷選手 11日(火)―駅待合室殺人。直前に通報か 12日(水)―大谷選手 13日(木)―Jアラート国民保護に関する情報 14日(金)―大谷選手 17日(月)―大谷選手 18日(火)―大谷選手 19日(水)―大谷選手 20日(木)―大谷選手 21日(金)―大谷選手
ここまで放送された15日中12日が大谷選手のニュースであり、しかもたっぷり時間を取って放送していました。さらに大谷選手のニュースで8時またぎをしたあとも、メジャーリーガーのダルビッシュ有選手、吉田正尚選手、ヌートバー選手や、NPBでも村上宗隆選手らWBC優勝メンバーを中心にピックアップしている様子がうかがえます。
日本テレビは8・9月に「FIBAバスケットボールワールドカップ2023」「ラグビーワールドカップ2023」の放送をすることから、今後も大谷選手の活躍を中心にしつつ、両競技を含めたスポーツ中心の構成になっていくのではないでしょうか。