WBCの勢いそのままにプロ野球も開幕から例年以上の盛り上がりを見せている。大激戦のペナントの行方を占うべく大物球界OBを緊急招集。野球評論家の江本孟紀氏、中畑清氏、達川光男氏の3人が見どころを大いに語った。【全4回の第2回。第1回から読む】
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中畑:予想外だったのが広島の好調よ。まだシーズンが始まったばかりだけど、首位に浮上したり、評論家たちの下馬評を覆している。
達川:ボクははじめからカープ優勝を予想していましたよ。オープン戦を見よったら阪神と巨人より強いと思ったんです。カープはピッチャーが揃っていますからね。
中畑:えー! 本当に?
達川:今は外国人バッターがハマっていないですが、去年のヤクルトのサンタナ(30)とオスナ(30)のように機能すれば、優勝すると思っています。
江本:カープは雨に強いんですよ。雨天コールドで2回勝ち、ほかの雨での試合でも逆転勝ちを2回している(4月19日終了時点、以下同)。元々水の中にいるようなやつばかりだからね。なんせ鯉だから(笑)。
中畑:今の広島の勢いは雨のせいなのか。
達川:それもあると思いますよ。環境が人を育てるというか、例えば巨人選手の場合、本拠地がドームだから、雨予報があったら中止だと思うんですよ。だけど、広島の連中は誰もそうは思わない。
中畑:オレは新井(貴浩)監督(46)のチーム作りも上手いと思うな。同じ駒大の後輩だけど、オレが監督だった時の雰囲気と似ているように思える。
達川:確かに新井はいい雰囲気を作っていますが、中畑さんとはかぶってませんよ。
中畑:何っ! 否定の仕方が酷いな。「そうですね」と合わせろよ(笑)。
江本:新井は選手と一緒に喜ぶのはいいけど、少しは抑えたほうがいいんじゃないのと思うけどね。負けが重なった時に、去年の阪神の矢野(燿大)みたいに沈んだ雰囲気にならないかなと……そこを心配しちゃうよね。落ちかけた時にどう立ち直らせるかがカギになる。それをヒット1本打って“イェーイ”とやっていると、見る見るうちに泥沼にハマっていくよ。
中畑:あと好調なチームと言えばDeNAだよ。中継ぎも悪くないし、三浦(大輔)監督(49)も、だんだん勝ちパターンに対する意識を持って采配を振るうようになってきているよね。選手の質もよくなっているし、オレはいいところまで行くんじゃないかと思っている。
達川:石田(健大、30)、東(克樹、27)、今永(昇太、29)ら既に強力な布陣にトレバー・バウアー(32)が加わるんですから強いですよ。
江本:DeNAもこれだけいいピッチャーがいるのであれば、誰か完投するような流れを作ってやると投手陣は安定してくる。それが判で押したように交代させるからもう一つ伸び上がってこない。
達川:たしかにセ・リーグでは9回を投げ切った投手が阪神の西(勇輝、32)だけ。そこは今後のポイントになるかもですね。
(第3回に続く)
【プロフィール】
江本孟紀(えもと・たけのり)/1947年、高知県生まれ。1971年に東映入団。1972年に南海に移籍しエースとして活躍。1976年に阪神に移籍し、1981年の引退後は参議院議員、タレントとしてもマルチに活躍。
中畑清(なかはた・きよし)/1954年、福島県生まれ。1976年に巨人入団。ムードメーカーの「絶好調男」としてチームを引っ張った。引退後は2012~2015年にDeNAの監督を務めた。
達川光男(たつかわ・みつお)/1955年、広島県生まれ。1978年、広島に入団し正捕手として活躍。引退後は広島監督や阪神などでコーチを務め、ソフトバンクでヘッドコーチとして日本一に。
※週刊ポスト2023年5月5・12日号