岸信夫・元防衛相の辞職に伴う衆院山口2区補選が4月23日投開票され、岸氏の長男で自民新人の岸信千世氏(31)が、民主党政権下で法務大臣を務めた無所属・平岡秀夫氏との一騎打ちを制し初当選した。当初は“余裕の選挙戦”とみられていたが、世襲批判やHPに“華麗なる家系図”を公開したことで思わぬ苦境に立たされた信千世氏。予断を許さない状況のなか、“一番長い日”となった運命の投開票日に密着した。
信千世氏は慶応義塾幼稚舎からエスカレーターで慶應義塾大商学部に進学した。卒業後、フジテレビに入社し社会部記者として活躍。2020年10月、フジテレビを退社し、信夫氏の秘書官となっていた。 信夫氏は安倍晋三元首相の実弟。信千世氏が山口2区補選で当選したことで、安倍家・岸家3代にわたる政治家一族を4代目として引き継ぐこととなる。支援者の一人はこう語っていた。
「もちろん苦しい選挙戦なのは知っているし、信千世くんもまだこの山口のことを全然知らないのは確か。ここ(山口2区)の地理もよくわかっていなかった。でも、まだ若いんだからこれから頑張ってもらえればいい。お父さん(信夫氏)だけじゃなくて叔父さんの安倍(晋三・元首相)さんの遺志を継いでいくと言っているし、昭恵さんも信千世くんの応援に駆け付けた。無党派層の支持が(平岡氏)に流れていて厳しい状況だけど、将来の日本の首相の門出のためにも負けられない」
投開票日の4月23日午後、開票に向け準備をしているであろう信千世氏の選挙事務所を訪れると、まさかのシャッターが降りている。信千世氏の顔が写った看板にはカバーがかけられ、人の出入りもほとんど見られない。通りかかった別の支援者に話を聞くと、「市内のホテルのホールで開票を見守るんだけど、私たちは入れないの。後援会の幹部や限られた支援者しか入れないようで、私たちは事務所側から『なにぶんスペースが狭いので』と断られちゃった。もちろんここ(事務所)ならわかるんだけど、ホテルをとっているのにねぇ……」
信千世氏の事務所に開票場への取材を申し込むと、「手狭なため、後援会の一部の方とマスコミに限らせてもらっています。取材はお受けいたしますが、なにぶん手狭で……」と、やはり“手狭”なのは確かなようだ。
だが、ある信千世陣営の関係者は“別の理由”を口にした。
「たしかに支援者全員が駆け付けると、パンクする広さなのは確かだ。ただ、来場者を絞っているのは信千世くんにSNSで脅迫めいたものが送られているようで、それに配慮した対策ではないか。先日の岸田首相の件もあるわけだし」