北朝鮮では社会主義政権を転覆させるなどの謀議をするための場所をなくす目的で、かつてレストランなどに設置されていた個室が閉鎖されているが、最近、それらの個室が秘密裏に復活しつつあることが明らかになった。新型コロナウイルスの流行で、レストランなどの経営が苦しくなったためで、経営者が「秘密の部屋」として、通常よりも高い料金設定で、主に密会を望むカップルらに使わせているというのだ。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。
これらのカップルは「8・3カップル」と呼ばれる。それは北朝鮮当局が1984年8月3日、工場が廃棄物を再利用することで利益を上げることを許可、奨励するという政令を発しことに由来している。禁止されている個室を利用して利益を上げさせてくれる「訳ありカップル」は、北朝鮮では思想的にも原則的にも、何の役にも立たない廃棄物のようなものというのがその由来といわれる。
北朝鮮東部沿岸に位置し人口約16万人の新浦市でも最近、「秘密の部屋」を設置するレストランが増えており、主に「人前では言えないような関係の男女」が利用しているという。
「秘密の部屋」は通常ダイニングルームの隅や、以前は食材を保管するために使用されていた部屋なども使われているという。
最近、この部屋を利用した市民がRFAに語ったところでは、部屋はレストランの一番奥にあり、テーブルが1つと椅子が2つ、その横に大きめのソファーが置いてある簡素なもの。メニューの料理は通常よりも10~20%ほど高めで、注文した料理を持ってきた後は、客が呼ばない限り店員が部屋の中に入ることはないという。
客層のほとんどは、北朝鮮では珍しい富裕層の男性で、より多くの出費をする余裕があるようだ。