子供向け学習図鑑『小学館の図鑑NEOアート 図解 はじめての絵画』が、発売からたった1か月で3回の重版、累計発行部数は20万部と大ヒットを記録している。子供向けと侮るなかれ、大人の間でも「こういう本がほしかった!」と評判だ。ヒットの理由を担当編集者の磯貝晴子さんに聞いた。
「ひと見開きごとにテーマを設定し、それに合わせて国も時代も関係なく絵画を並べているところが面白いと好評をいただいています。ライターさんに『子供の興味を引くテーマを考えてコンテを切ってください』とお願いし、それを持ち寄って意見交換をする“コンテ会”を何度も行い、テーマを厳選しました」(磯貝さん・以下同)
約360点にも及ぶ作品図版にもこだわりが。
「世界中の美術館に交渉して、できる限り高精細な図版を取り寄せました。美術全集のような専門書を手がけるプリンティングディレクターが刷り上がりをチェックしていて、印刷も美しいんです。このクオリティで3000円以下というお得さも、支持されている理由のひとつかもしれません」
「読者アンケートでは、主婦からの声がいちばん多いんです」と磯貝さんは語る。
「親子で楽しんでいますという声もあれば、お子さんがいなくても買ってくださっているかたも。有名な作品をたくさん掲載しているので、アートに詳しくないかたにも楽しく読んでもらえるはず。美術館に行くと、つい、絵画そのものよりも画家名やタイトルを見て理解しようとしてしまうかたも多いはず。でも、アートは本来もっと自由なもの。本書でその楽しさを知ってもらえたらうれしいです」
『図解 はじめての絵画』のポイント
・ひと見開きごとにユニークなテーマを設定
本書は全5章からなり、それぞれの章でひと見開きごとにテーマが設定されている。1枚の絵の中に描かれた人物たちが誰なのかを解き明かしメインの人物を探す『この部屋の主役はだれ?』、浮世絵と西洋絵画を並べて“雨の描き方”を比較する『形の見えない雨を、どうやって描く?』など、テーマ設定もユニーク。その日の気分でランダムに開いて楽しめる。
・絵画を原寸大で掲載! 美術館に行くよりもじっくり鑑賞できるかも
絵画の一部分を原寸大で掲載するページも。点描で描かれた絵の人物の肌の色が何色の点で描かれているかなど、じっくり鑑賞することができる。
「こんなに近い距離で絵画を見ることって、美術館でもなかなかないですよね(笑い)。隅々までじっくり鑑賞していただけます」(磯貝さん)。
・迫力の“観音折り”で横長の絵巻もワイドに掲載
観音開きのようにページをめくることができる「観音折り」という製本技術を随所に使用している。片方のページを開くと横長の見開きになるという特性を生かし『鳥獣人物戯画』などの絵巻を掲載。
「横に長い絵巻も、場面ごとに切らずに掲載できました。実際の鑑賞と同じように、描かれた物語を見ることができます」(磯貝さん)
・鑑賞するだけが絵画じゃない! 素材や技法についても解説
第4章「素材と技法」では“絵の描き方”にアプローチ。絵の具の製造方法や、筆の種類、水彩画や油彩画などの技法が細かく解説されている。また第5章「美術館に行こう」では、展覧会が開催されるまでの流れなどを紹介。
「絵を見るのが好きな人だけでなく、描くのが好きな人、展覧会が好きな人などさまざまな人に楽しんでいただけます」(磯貝さん)
撮影/黒石あみ
※女性セブン2023年5月11・18日号