アートをテーマにした図鑑が大ヒットを記録し、話題になっている。誰しも一度は見たことがあるような有名絵画が面白い切り口で解説されている『小学館の図鑑NEOアート 図解 はじめての絵画』は、発売から1か月で3回の重版、累計発行部数は20万部に到達。子供だけでなく大人の間でも「こういう本がほしかった!」という声が寄せられている。そんな同書の内容を少しだけ紹介しよう、
モナ・リザってどこがすごいの?
世界で最も有名な絵画『モナ・リザ』。しかし「『モナ・リザ』の何がすごいの?」と聞かれると、何と答えればいいのか……。この絵が描かれた時代背景や、絵に描かれた要素から、そのすごさをひもといてみよう。
『モナ・リザ』が描かれた時代、人物画には2パターンあった。ひとつは信仰のために、聖母マリアやキリストなどキリスト教の重要人物が描かれる場合。もうひとつは貴族が地位の高さや豊かさを他人に誇る場合。どちらも表情は硬く、心の動きを読むことはできない。
一方『モナ・リザ』のモデルは誰だかわからない女性。しかしその顔は、聖母とも貴族ともまったく異なる曖昧な表情で、人の自然な心の動きを感じることができる。
・同時期の貴族の絵と比べてみると…
アンブロージオ・デ・プレディスの『ビアンカ・マリア・スフォルツァ』に描かれているのはイタリアの貴族の女性。ドレスや宝石など装飾品は細かく描かれているが、無表情な横顔で人物の感情はわからない。
・「自然の法則」を描いているところもすごい!
人と、自然を含めた世界そのものが、同じ法則で成り立っているというダ・ヴィンチの考えを表したスケッチが『人体均衡図(ウィトルウィウス的人体)』。『モナ・リザ』では人物そのものも、法則に基づき色彩を途切れることなく変化させて描いている。
ダ・ヴィンチは水の流れを観察・研究することで「自然は途切れることなく変化し続ける」という法則を発見した。『モナ・リザ』の背景をよく見ると、この法則に基づいた水が風景として描かれている。
画家はどこにいる?
『アテネの学堂』は、画家が大昔の出来事や物語の場面を想像して描いたもの。だが、絵の中に実は画家自身の姿も描かれている。
この絵はイタリアの画家・ラファエロが2000年以上前のアテネを想像し描いたもので、その頃の優れた学者や芸術家が60人以上描かれている。さらにラファエロ自身のことをギリシャの有名な画家として端の方に描いている。
ラファエロと同じ時代に生きた2人の芸術家も絵の中に。ミケランジェロは画面中央手前、ダ・ヴィンチはその右上に、それぞれギリシャの哲学者として描かれている。
・こんな作品もあるんです!
磔にされた十字架から、キリストが降ろされている場面を描いた『十字架降下』。画家のポントルモは、自分の姿を右端の影の中に描き、キリストと周りの人々の明るくまばゆい色彩を強調した。
※女性セブン2023年5月11・18日号