1970年代に巻き起こった空前の超能力ブームのなかで大人気となったのが、清田益章氏(61)だ。テレビ各局が関連番組・特番を量産し、何人もの“スター”が生まれたが、当時の清田氏はまだ小学生だった──。4月30日に61歳の誕生日を迎えた「元・超能力少年」は、当時をどう振り返るのか。【前後編の前編】
「じゃ、そろそろやりますよ。見たい人はこっちに来てください」──。
そう呟くと、スキンヘッドの男性は真剣な眼差しで金属製スプーンの柄をさすり始めた。周囲が静まる中、1分、2分と時が流れ、10分近く経過しただろうか。スプーンの柄がまるでゴムのようにしなりはじめ、まもなく切断された。“ひと仕事”を終え、「ふぅ……」と息を吐いたこの男性こそ、かつて「超能力少年」として一世を風靡した清田益章氏である。
「単に『曲がれ、曲がれ』と思うのではなく、曲がった瞬間の場面を心の中で育むんです。まずはスプーンを曲げるのか、捩じるのか、折るのかを決めて、それが現実になった瞬間を思い描くと息が整い、思いが整う。それが念じるということです」
禅問答のような説明をする清田氏。かつての長髪がスキンヘッドになっても、射るような眼光の鋭さは変わらない。日本全国を驚かせた“エスパー”は今、何を語るのか──。
清田氏は1962年、東京都足立区にある寿司店の長男として生まれた。幼い頃から「不思議な体験」を繰り返していたと振り返る。
「ミニカー遊びをしていると、部屋の蛍光灯が点いたり消えたりすることがありました。ドライブの時に見た風景を思い出しながら遊んでいたのですが、トンネルに入る瞬間になると電気が消え、出口に差し掛かると点灯する(笑)。イメージと現実がシンクロしたのでしょうね。遊び終えて片付けを始めると、遠くのミニカーがスーッと手元に寄ってきたこともあります」(清田氏。以下同)
これはもちろん科学的に説明がつく内容ではない。ただ、清田氏は「日常的にそんなことがあったもので、特殊な能力があるという意識はなく自然に受け入れていました」と話すのだった。