5月2日から歌舞伎座で公演される『團菊祭五月大歌舞伎』で、「初代尾上眞秀」(10才)が初舞台を踏む。七代目尾上菊五郎(80才)を中心に据えた音羽屋には、歴史ある名跡が複数あるにもかかわらず、本名である「眞秀」(まほろ)として歌舞伎役者としての歩みをすすめることになった背景には、母・寺島しのぶ(50才)の悲願もあったようだ。
眞秀は2012年、寺島と、フランス人のローラン・グナシア氏との間に生まれた。2017年5月、4才のときに歌舞伎座の『魚屋宗五郎』の与吉役で初お目見えすると、舞台に度々出演し芸を磨いてきた。
「幼いながら、本人は演じることの楽しさと重みを理解している。稽古も楽しんでやっているようで、ご贔屓筋からの評判もいい」(歌舞伎関係者)
歌舞伎の世界では、何度舞台に上っていようが、役者としての名前がつくまでは「お目見え」扱い。前述の初お目見えから6年たってようやくの「初舞台」となる。
そんな眞秀への期待度は高い。今年2月の初舞台の記者発表はフランス大使公邸で行われた。初舞台を彩る「祝幕」は、フランスの高級ブランド『シャネル』がサポートするという徹底ぶりだ。
本人もそれを自覚しているのか、会見ではフランス語と日本語で挨拶。「いつか、ぼくとパパの母国のフランスで歌舞伎公演をやってみたいと思います」とも明かしていた。
歌舞伎関係者は、本名である「眞秀」を名乗ることになった背景を推察する。
「音羽屋には、これまでに連綿と受け継がれてきた名前、しかも期待の子役が名乗るいい名前はたくさんあるため、その中から“襲名”するというのが自然な流れでした。実際、眞秀の襲名に具体的な名前もあがっていたと言います。
それでも、『初代・眞秀』を名乗ることになったのには、寺島さんの意向も大きかったようです」(別の歌舞伎関係者)
寺島は、音羽屋に生まれながらも「女性」であることを理由に歌舞伎役者になることはできず、女優としての活路を開いた。
「歌舞伎界では、どうしても“長男筋”が優先されがちです。今後、眞秀がどれだけ芸に精進するかによる部分も大きいですが、歌舞伎役者としての苦境に立たされないとも限らない。そのとき、『眞秀』の名前で活動を行っていれば、仮に俳優として“鞍替え”してもスムーズにいくという考えがあったのではないでしょうか」(別の歌舞伎関係者)