今年2月に発売された学習図鑑『小学館の図鑑NEOアート 図解 はじめての絵画』が、発売からたった1か月で3回の重版、累計発行部数は20万部と大ヒットを記録。「子供向けどころか、大人こそ読むべき!」「アート入門に最適!」と評判だ。この図鑑の中から、ナポレオンを描いた2枚の絵について、そいて「動き続けるもの」についての内容を紹介する。
勝ったときのわたしと負けたときのわたし
同じ人物をモデルにしても、絵によって異なる印象を受けることがある。この2つの絵はどちらもフランスの軍人、ナポレオン・ボナパルトを描いたもの。グロ『アルコレ橋のボナパルト』は、27才のナポレオンが若き司令官として戦場で旗を振っている場面で、勝利したすぐ後に描かれたため、実際よりかっこよく描かれている。
一方、ドラロッシュ『フォンテーヌブローのナポレオン』は45才のナポレオンが戦争に負けたときの姿を25年以上後に想像して描かれた絵。髪の毛も服も乱れだらしない格好に見えるが、鋭い目つきは左の絵と変わらない。負けてもなお諦めない心の強さが感じられる。
絶えず動き続けるものはどう描くか
寄せては返す波、走っている動物、太陽の光……。動き続ける自然や生き物の一瞬を切り取って描いた作品もたくさんある。
・いまにも崩れ落ちそうな波
葛飾北斎『「冨嶽三十六景」神奈川沖浪裏』で、富士山よりもはるかに大きく描かれた白い波。盛り上がった波が崩れていく瞬間の水の動きをはっきりとした線で描き、迫力を出している。
・たくさんの脚や尾で動きを表現
バッラ『鎖につながれた犬のダイナミズム』で描かれている、鎖でつないだ犬を散歩させている様子。連続する動きがひとつにまとめて描かれているため、鎖、飼い主の足、犬の脚や尾がたくさんあるように見える。地面に描かれた斜めの線も動きを強調。
・雲や水の反射で太陽の光を描く
モネの『印象 日の出』での朝日が昇る港の風景。朝もやの中、太陽そのものはオレンジの円でくっきり描かれているが、太陽の光は雲に反映した朝焼けと、オレンジと白で描かれた水面の波の反射で表されている。
・前のめりな姿勢でスピード感を出す!
歌川広重『「東海道五十三次之内」庄野 白雨』では、画面右手前で坂道を下る人と、左先頭で上る人に注目。どちらも前のめりで片足を蹴り上げ、反対の足に体重を乗せており、走る速さが表現されている。坂道が急なため、その速さがさらに強調されて見える。
※女性セブン2023年5月11・18日号