日本の総人口が2020年の1億2615万人から2070年には約3割減少し、8700万人となると厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が発表し、日本じゅうが動揺している。設備投資や開発に及び腰に対して慎重にならざるをえない人口減少ぶりだが、神奈川県の相模鉄道は横浜市旭区の二俣川駅から藤沢市の湘南台駅を結ぶ、いずみ野線の沿線開発に取り組んでいる。ライターの小川裕夫氏が、なぜ時代に逆行するように見える沿線開発に本腰を入れているのかレポートする。
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2023年3月18日、相模鉄道(相鉄)は羽沢横浜国大駅から新横浜駅まで、東急電鉄(東急)は日吉駅から新横浜駅までを延伸。延伸区間は、新横浜駅を境に相鉄新横浜線・東急新横浜線と呼ばれ、同時に相互乗り入れが始まった。
それまでの相鉄は神奈川県の一部地域を走る私鉄だったこともあり、東京をはじめ千葉県・埼玉県では決して知名度が高いとは言えなかったが、2019年11月に相鉄の西谷駅―羽沢横浜国大駅間が開業。羽沢横浜国大駅を境にJR線との相互乗り入れが始まり、相鉄の電車が東京都心部を走るようになった。
電車が東京を走ることは、相鉄の悲願だった。それだけに、乗り入れが始まる2019年11月前から、相鉄はテレビCMを放送するなど大々的にPRを展開していた。
「相鉄は2017年にグループ創立100周年を迎え、2019年にはJR線と、2023年には東急線との相互直通を開始するという節目を迎えました。そうした節目を迎えるにあたり、2013年にデザインブランドアッププロジェクトを立ち上げて当社グループの認知度と好意度、沿線価値の向上を図りました。その一環として、鉄道の駅・車両・制服などを設計・リニューアルを進めています」と説明するのは、相鉄グループの広報担当者だ。
東京進出という悲願を達成した相鉄だが、それだけで満足はしていない。今後も沿線開発の案件が目白押しだ。
沿線の宅地造成と相鉄延伸の歴史
相鉄は横浜駅―海老名駅を結ぶ相鉄本線と、本線の途中駅である二俣川駅から分岐して湘南台駅までを結ぶいずみ野線の2線を有する。相鉄は複雑な歴史を経ているが、前身の神中鉄道は現在の相鉄本線である横浜駅―海老名駅間を1941年に開業させた。
それに対して、いずみ野線は1976年に二俣川駅―いずみ野駅間が開業。その後も段階的に延伸し、現在は終着駅となって湘南台駅まで延伸を果たしたのが1999年。
いずみ野線が本線の完成から30年以上も歳月を隔てて建設された理由は、戦災復興や高度経済成長で横浜市の人口が急増していたことが背景にある。