国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」(RSF、本部パリ)は5月3日、2023年の世界各国の報道自由度ランキングを発表し、対象180カ国・地域のうち、北朝鮮が180位、中国は179位、ベトナム178位とアジアの3共産主義国が最下位を競い合う形となった。かつては上位を維持していた香港は中国による統制強化の影響で140位だったが、台湾は35位となった。日本は昨年から3つ順位を上げて68位。トップは7年連続のノルウェーだった。
RSFによると、今年は昨年のランキングから順位決定の方法を変更し、各国・地域の政治・経済状況と社会・文化状況、法的枠組み、安全性の5指標で順位を判定した。
この結果、昨年から大きく順位が変動も多く、中国は報道環境指数で179位と4つ順位を落とした。刑務所に送り込まれるジャーナリストの数は世界有数で、政権側が作成したプロパガンダが報道機関によって大量に流されている代表的な国の1つとなっている。北朝鮮は昨年同様、最下位だった。
ウクライナへの侵攻を続けるロシアは9つ下げて164位。RSFによると、モスクワは短期間で新しい報道網を構築し、ウクライナ南部の占領地域でロシア政府のメッセージを拡散することに集中している。ロシアの独立系メディアに対しては報道禁止や報道妨害を繰り返し、「外国のエージェント」と批判するなど取り締まりを強化している。また、ロシアはウクライナにおける戦争犯罪の激増で、5指標のなかでも安全性と法的枠組みの評価が最も低い国のひとつとなった。
3つ順位を落とした米国は45位で、ジャーナリストの労働環境の悪化や記者に対する暴力事件の多発が大きく影響した。特に、マフィアや政府の腐敗を暴いたラスベガスのベテラン調査報道記者ジェフ・ジャーマン氏が自宅前で暗殺された事件や、「Wave 13」の記者ディラン・ライオンズ氏がインタビュー中に銃の乱射で死亡した事件があり、2人のジャーナリストの死は米国の報道の自由ランキングにマイナスの影響を与えたという。
RSFのクリストフ・ドロワール事務局長は「多くの国で権力の攻撃性が高まり、インターネット上や現実の世界で記者に対する敵意が増している」と指摘している。