「岸田政権の中間評価」が問われた衆参5補選で自民党は4勝1敗と勝利し、永田町では解散風が一層強く吹きだしている。だが、“聞く力”をどこかに忘れ去った岸田文雄・首相の思惑通りにはいかないようだ。
望み通りにはならない
支持率上昇を追い風に総選挙準備を進めてきた岸田首相は、補選翌日のぶらさがり会見で「今解散は考えていない」と煙に巻いたものの、額面通り受け取る者はいない。後見人の麻生太郎・副総裁はその日の自民党役員会で「(補選は)立派な成績をあげたと自信を持たなければならない」と首相の背中を強く押した。
統一地方選の応援に駆け回った自民党議員たちも、地方選が終わると早速、「解散は近いぞ!」と当選した系列議員を集めて総選挙の対策を協議している。
政治ジャーナリスト・野上忠興氏は広島サミット(5月19~21日)後の解散・総選挙は既定路線だと指摘する。
「岸田内閣の支持率は広島サミットでピークを迎える。首相にとって今が解散には一番のタイミングで、先送りするほど状況は悪くなる。勝負に出るしかないと腹を固めているはずです。通常国会会期末の6月21日に衆院を解散し、大安の7月23日投票が有力でしょう。この日程であれば選挙期間中にちょうど安倍晋三・元首相の一周忌(7月8日)をはさむことになり、保守層に強くアピールできる」
安倍氏の一周忌を選挙のテコにして勝利をめざすと見るのだ。
だが、いざ総選挙となれば、岸田首相の望み通りの結果にはなりそうにない。
統一地方選と衆参補選の結果から浮かび上がったのは、日本維新の会の躍進と公明党の集票力大幅低下だ。
維新は地盤の大阪を制覇し、和歌山補選、奈良知事選に勝ったうえに全国でも599人の議員・首長を当選させ、議席を1.7倍に増やした。次の総選挙では、大阪地盤の地方政党から本格的な全国政党へと脱皮する基盤をつくったと見ていい。維新の藤田文武・幹事長は衆院選について、「今の野党第1党より多くの議席を獲得する。候補者はそれより多く出す」と野党第1党をめざすことを宣言し、“台風の目”になるのは間違いない。