チェスの世界チャンピオンを決める世界チェス選手権の優勝決定戦が4月30日、中央アジアのカザフスタン共和国の首都アナスタシアで行われ、中国の丁立人がロシアのイアン・ニポムニシを破り優勝を決めた。中国人選手のチェス世界チャンピオンは丁が初めて。丁は優勝賞金110万ユーロ(約1億4900万円)を獲得した。新華社電などが報じた。
優勝決定戦は14試合が行われ、丁とニポムニシは14試合のうちそれぞれ3勝ずつを挙げ、残り8試合は引き分けでポイントがいずれも同じ7点となった。
優勝が決まる14試合目は大会始まって以来のラウンド数・試合時間の長さとなる90ラウンド、6時間33分で引き分けとなった。このため、それぞれの持ち時間が25分に短縮されるラピッドプレーによるタイブレーク(優勝決定戦)に持ち込まれ、「息をのむような終わり方」(新華社電)で丁が制した。
中国人としては1991年に女子選手の謝軍が優勝していたが、中国人の男子選手としては丁が初の栄冠を勝ち取った。
賞金200万ユーロ(約3億円)は通常、優勝者と準優勝者に60対40の割合で分配されるが、今回はタイブレークに持ち込まれたため、分配率は55対45となり丁の獲得した優勝賞金は110万ユーロとなるなど、これも極めて異例の結果となった。
丁は1992年10月24日に浙江省温州市で生まれ、1996年、4歳の時にチェスのトレーニングコースに入門。5歳で最年少のアンダーン6のカテゴリーで優勝するなど才能を発揮し、高校で中国の大会で優勝した。北京大学法学部に入学後もチェスに打ち込み、2014年と2018年の世界チェスオリンピックでそれぞれ中国代表として参加し団体優勝に導いた。
今大会はこれまで10年間、世界チャンピオンに君臨してきたノルウェーのマグヌス・カールセンが出場を辞退しており、新チャンピオンの誕生となった。