北朝鮮咸鏡北道崇仁市の刑務所に服役していた朝鮮人民軍の元兵士が脱走し警官4人を射殺した後に、自殺するという事件が発生した。この間、同市内は完全に交通封鎖されるなど、厳重警戒態勢が敷かれたという。
北朝鮮における囚人の脱獄や警官の射殺事件が起きたことで、北朝鮮の刑務所の監視体制の緩さが浮き彫りにされている。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。
事件が発生したのは今年の3月で、囚人は電気修理の作業をしていたが、監視する看守がたった1人だったことから、すきを見て持っていたハンマーで看守を殴り、看守の拳銃を盗んで逃走した。
看守はやがて意識を取り戻し、上司に囚人の脱走を報告。すぐに、警官隊と軍部隊が出動し、警官隊が刑務所からほど近い倉庫を調べていたところ、囚人が発砲し、4人の警官が死亡。しかし、すぐに倉庫付近は軍部隊と警官隊が取り囲んだことから、囚人は銃で自殺した。
この囚人はかつて軍で狙撃手を務めていたが、兄が北朝鮮の体制について、批判的な文章を上部機関に送り逮捕されたことで、軍から強制除隊処分を受けた。その後、無職中に盗みで逮捕され、刑務所に収監されていた。
同市の住民はRFAに対して、「捜索活動中、地元住民の移動と車両の通行は完全に制限されており、市民は不安のただなかにいた。この事件に関して、ほとんどの住民は犯罪の性質上、彼が罰せられるのは当然だと考えている」と話しているという。
北朝鮮では常識とされているが、兄の体制批判のとばっちりで職を失うなどの理不尽ともいえる処遇への怒りが引き起こした惨事といえよう。