ライフ

コロナの衝撃から立ち直った美容医療、急がれる課題への取り組み

美容医療の市場が回復。出典/矢野経済研究所

美容医療の市場が回復。出典/矢野経済研究所

※本記事は、ヒフコNEWSからの転載記事です。

 矢野経済研究所の調査によると、日本の美容医療の市場は、2020年にコロナの影響を大きく受けて減少したが、21年は前年比101.8%増の3990億円に回復したようだ。美容医療の需要がさまざまな分野で高まっている一方で、美容医療をめぐって複数の課題も次々と報告されており、利用者や医院が増える中、これらへの対処も急がれる。

 矢野経済研究所の報告によると、手術以外の非外科的な治療がさまざまな診療科で行われ、人口の集中する関東圏、関西圏、東海圏で増え、アンチエイジング分野の再生医療やドクターズコスメを強化する動きが目立つと説明する。

 また、脱毛クリニックも急成長しているという。ヒフコNEWSでは同じ矢野経済研究所の調査より、エステ脱毛を含めた脱毛市場が3年連続で市場縮小していることを伝えているが、美容医療で扱われている医療脱毛は急成長しているという。

 今後の見通しについて、同研究所は市場がさらに拡大していくという予測を示す。手術以外の治療が人気になる一方、手術の需要は減少するという。

 非外科的な治療は、美容外科や形成外科だけではなく、皮膚科や美容皮膚科などの幅広い診療科で扱われることが一般的になっている。大都市での新たなクリニックの増加もあり、今後も増加していくという見通しだ。

 日本の美容医療市場は、美容外科、形成外科、皮膚科、美容皮膚科を提供する医療機関で提供される、手術的および非手術的な治療を含む。

 同研究所によると、特に医療脱毛、ボツリヌス療法、ニキビやニキビあとの治療、美肌、二重まぶた(埋没法)、しみ・あざ・ほくろ除去、ケミカルピーリングなどが有望という。

 ヒフコNEWSによると、非外科的な美容治療は世界的に増加傾向にあり、国際美容外科学会(ISAPS)の調査によれば、過去4年間で約1.5倍になった。日本でも同様の傾向が予想される。

 また、5月8日にはコロナが5類感染症に分類され、多くの規制が大幅に緩和される。これにより、マスクをつけなくてもよくなったり、外出が増えたりするなど、美容医療の利用方法が変わることが考えられる。

日本は世界3位の美容医療市場

 もっとも美容医療にはいくつかの課題がある。国民生活センターによると、美容医療に関する問い合わせ件数は前年度比33%増加したと発表された。

 また、ヒフコNEWSも伝えたように、超音波を利用したHIFU(ハイフ、集束超音波治療)の施術後の被害に関する苦情が増え、国が事故調査を行った。このほか医療脱毛クリニックの突然の閉院により、多くの利用者がサービスを受けられない状態に陥ったことも報告されている。ガイドラインで推奨されていないフィラー注入による豊胸術が依然として行われていることも問題になっている。一連の問題は、美容医療全体に悪い影響をもたらす恐れがある。

 日本は、世界の中でも米国とブラジルに次いで、美容医療の実施件数が世界第3位。世界的にも存在感のある日本の美容医療において課題が山積しているのは好ましいことではない。

 美容医療に関心を持つ人であれば、これら課題も含めたトレンドに注目するのは適切な施術を受けるためにも重要だろう。今後も、ヒフコNEWSでは日本の美容医療のトレンドを追っていく。

参考文献・関連記事

2021年の美容医療市場規模は前年比101.8%の3,990億円~コロナ禍の影響から脱して回復基調に~

美容整形手術の最新動向、脂肪吸引が豊胸術を抜き、世界で最も人気のある美容整形手術に

美容医療関連の相談件数が前年より33%増加、国民生活センター

エステティックサロンなどでの日本のハイフ関連事故の詳細明らかに、国の消費者安全調査委員会が報告書

医療脱毛クリニック突然閉院、SNSで嘆きの声、相談窓口の設置も

「やってはいけないフィラー豊胸術」、世界が認めていないのに日本でいまだに行われている理由

【プロフィール】
星良孝/ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表、獣医師、ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

ヒフコNEWS

ヒフコNEWSは、国内外の美容医療に関する最新ニュースをお届けするサイトです。美容医療に関連するニュースを中立的な立場から提供しています。それらのニュースにはポジティブな話題もネガティブな話題もありますが、それらは必ずしも美容医療分野全体を反映しているわけではありません。当サイトの目標は、豊富な情報を提供し、個人が美容医療に関して適切な判断を下せるように支援することです。また、当サイトが美容医療の利用を勧めることはありません。

関連キーワード

トピックス

役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さんが今も築地本願寺を訪れる理由とは…?(事務所提供)
《笑福亭笑瓶さんの月命日に今も必ず墓参り》俳優・山口良一(70)が2年半、毎月22日に築地本願寺で眠る亡き親友に手を合わせる理由
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月20日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン