5月8日午後6時20分頃、銀座のロレックス専門販売店で発生した強盗事件。押し入った白い仮面姿の3人組が約70点の腕時計、総額2億5000万円相当を奪って逃走したことは大きな衝撃を与えた。逃亡先のマンションで逮捕されたのは高校生を含む16~19歳の少年4人。全国紙社会部記者が語る。
「人通りが多い街中での堂々の犯行という杜撰な面もありますが、全員が横浜市在住ながら、いずれも面識がないと供述し、接点も見つかっていないことから計画性も窺える。警察はSNSの“闇バイト”を通じて集められたとみて、指示役がいる可能性を視野にいれて捜査を進めています」
今年1月から全国で強盗事件が多発していた。主犯格4人が逮捕され、彼らが名乗った「ルフィ」の名前は連日報じられた。また、警察庁によると2021年夏以降、「出し子」「受け子」といわれる闇バイトの実行犯は60人以上逮捕されたが、そのほとんどが10~20代の若者だという。
「使い捨てにされるだけ」という闇バイトの実態が明らかになっているにもかかわらず、SNSには「高額バイト」「100万円当日現金手渡し」といった募集の投稿は後を絶たない。闇バイトの実態に詳しい作家の草下シンヤ氏はこう語る。
「一連のルフィ事件以降も闇バイトに応募する若者は減っていないとみています。そのため報酬も大きな変化は見られない。一連の報道で変わったことは厳罰を避けるために人に危害を加えなくなってきたことと、別の秘匿性の高い通信アプリを使うようになったくらいでしょう」
なぜ若者は闇バイトに手を染めてしまうのか。草下氏は闇バイトを募集するリクルーターに取材した際、こう言われたという。
「『応募する人はニュースを知らないから影響はない』と。情報やニュースの入手先は興味のある話題しか表示されないSNSのみで、リクルーターの甘い声を疑わず鵜呑みにする人ばかりということです。私自身もTwitterで注意喚起を行なっていますが、彼らによると『意味がない』という。
もし応募者が『逮捕されるんじゃないか』と不安を漏らしたら、『未成年だから大丈夫』と言えば信じてしまう。私が以前会った10代の出し子も先輩に『稼げるバイトがある』と誘われて何も考えずに参加したら闇バイトだったというケースでした。今後もこうした事件は続くでしょう」
日本の治安が脅されている。
※週刊ポスト2023年5月26日号