身長・体重の測定から始まって、採血にCT……健康診断のフルコースは、なかなか大変なものだ。人によっては省いても問題ないものもあるが、しっかり受けておくべき検査も存在する。見分けるべきいちばんのポイントは死亡率を低下させるか否かだ。常磐病院の乳腺外科医、尾崎章彦さんがアドバイスする。
「早期で見つかれば助かり、遅れれば進行して死につながる病気の発見を対象とするのが適切です。40代からのマンモグラフィーに加えて、大腸がんを調べる便潜血検査、胃の内視鏡検査はマストで受けることを推奨します。
特にいまの50~60代は胃がんの原因となるピロリ菌を持っている人が少なくありません。一度は内視鏡検査を受けて、萎縮性胃炎とピロリ菌の感染を調べておきましょう。異常がなければ、胃がんにはかかりにくいと思っていい。特にピロリ菌に感染している人は、定期的に内視鏡検査を受けるようにしてください。
大腸がんに関しても、毎年の便潜血検査は受けたうえで、罹患者が増える50~60代で一度は内視鏡検査を受けるべきです」
ナビタスクリニック川崎の内科医、谷本哲也さんも、大腸内視鏡検査は有用だと声を揃える。
「便潜血検査は安価で体への負担もないため受けるべきですが、見落としもある。特に小腸に近い部分の大腸にがんができた場合、出血しづらいため便の状態からはわからないことが多い。実際、便潜血検査では異常がなかったのに、大腸内視鏡検査でがんが発見されるケースもあります」
女性の死因のトップである大腸がんは貧血がその兆候であることも少なくない。東海大学医学部名誉教授の大櫛陽一さんが言う。
「50、60代で貧血になった場合、大腸がんや子宮筋腫など大きな病気が隠れていることが珍しくありません。初期の大腸がんは自覚症状がない。定期的に貧血検査を受けることで身を守れます。大事なのは、貧血の原因まで必ず突き止めること。糖尿病も初期は自覚症状がないので、血液検査での早期発見を推奨します」(大櫛さん)