もういくつ寝ると、嫌でも迎えてしまう梅雨。この時期になると発生するカビは厄介な存在だ。
「そもそもカビは、きのこや酵母の仲間で、真菌と呼ばれる微生物の一群です。大きさは菌種によって異なりますが、2〜10マイクロメートル(1マイクロメートルは1mmの1000分の1)と目には見えないほど小さく、空気中や土壌など、さまざまな場所に生息しています。その種類は約10万種ともいわれています。
種の役割をする胞子をまき散らし、定着した場所で糸のような菌糸をのばし、栄養や水分を吸収して増殖していきます」
とは、千葉大学真菌医学研究センター准教授の矢口貴志さんだ(「」内以下同)。カビの胞子が定着し、増殖するには3つの条件があるという。
「それが、温度・湿度・栄養です。温度は約20〜30℃、湿度は60%以上、垢や食べ物のカスといった汚れがあれば、それを栄養源にして増殖します」
まさに梅雨時期の室内は、カビの増殖にうってつけというわけだ。特にこれから紹介する4種のカビは、日本のすべての家にいると言っても過言ではないという。
●ペニシリウム
パンや果物など主に食品に生える青カビの一種。抗生物質ペニシリンやチーズを作るものから、パツリンというカビ毒を作るものなど約150菌種もの仲間がいる。
●エクソフィアラ
浴室の排水溝や床、小枝や植物のトゲなどについている黒カビの一種。傷口から体内に侵入すると炎症を起こすことがある。
●アスペルギルス
別名コウジカビ。自然界で最もよく見られる。醸造に欠かせないものから発がん性のカビ毒を産生する菌種も。穀類やエアコンのフィルター、ほこりなどに生息。
●クラドスポリウム
布団や冷蔵庫のパッキン、風呂場の壁などに見られる黒カビの一種。大量に吸い込むとぜんそくなどの呼吸器系アレルギーの原因に。
【プロフィール】
矢口貴志さん/千葉大学真菌医学研究センター准教授。カビ研究の第一人者。明治製菓での勤務を経て同センターに移り、生活環境における病原性があるカビを専門に研究。
取材・文/番匠郁 イラスト/こさかいずみ
※女性セブン2023年6月1日号