【週刊ポスト連載・医心伝身】前号でCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の診断は、治療方針を決めるために多検査が必要だと説明した。治療に関しては増悪の予防を行ない、日常の活動度をあげ、肺機能の低下を防ぎ、合併症の有無を判断した上で、薬物治療と非薬物治療を行なう。薬物治療では吸入薬を使用するが、重要なのは非薬物治療だ。栄養指導と運動療法を組み合わせた包括的な呼吸リハビリを継続する。
COPDは進行すると咳や痰だけでなく、坂道などでは息切れがひどくなる。さらに悪化すれば動脈中の酸素不足となってしまい、呼吸不全になる。その結果、日常の活動度合いが著しく低下し、全身の臓器のダメージが進む。
COPDの主な死因は肺炎と肺がん、心筋梗塞など心血管病変に大別される。なにより息切れの悪化で誤嚥しやすく肺炎リスクが高まる。また肺がんの発症も懸念され、早期発見が重要となってくる。
前号に続き、呼吸ケアクリニック東京(東京都中央区)の木田厚瑞理事長に聞いた。
「この疾患の予後を決めるのは4つ。1つ目は体重の減少、2つ目は肺機能検査による気道閉塞変化、3つ目は労作時の息切れの度合い、4つ目は6分間など決められた時間内の歩行距離の減少です。これらに加え、増悪の頻度や程度を考慮しながら適切な治療を進めます」
喫煙習慣がある場合の治療の第一歩は、やはり完全禁煙だ。それと並行して薬物療法と非薬物療法を行なう。症状を改善させる薬としては気管支拡張薬や去痰薬がある。気管支拡張薬は気管支拡張効果の高い抗コリン薬とβ2刺激薬の2つを合わせた合剤吸入薬が基本で、喘息を合併していれば、これに吸入ステロイドを加えることもある。
薬物療法以上に重要なのが非薬物療法だ。肺胞は一度壊れると再生できないが、前号で説明したように肺は大きな臓器なので余力がある。この利点を活かす栄養指導や運動療法、呼吸法の指導などを組み合わせた「包括的呼吸リハビリ」が効果を発揮する。
例えば運動療法では息切れの緩和を目的とした上肢を鍛える運動が効果的だ。息を吐くのを意識して両腕の上下運動や広げる運動を継続し、上半身の筋肉全体を動かすことが息切れの改善に繋がる。