韓国の研究機関は1981年頃から、衛星による北朝鮮国内の画像の分析を続けているが、その分析結果によると、北朝鮮の干ばつが今年の春に記録を取り始めて以来最悪のものになっていることが明らかになった。北朝鮮国内の農業用貯水池の水位が例年に比べてかなり下がっており、一部の地域では住民の飲料水も不足、水の値段が高騰しており、多くの人々が生命の危険にさらされているという。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。
韓国を拠点とする韓国安全保障戦略研究所の北朝鮮調査グループはこのほど、アメリカ航空宇宙局(NASA)の人工衛星が撮影した昨年と今年の12の農業用貯水池の水位を比較したところ、今年は昨年に比べてかなり水位が低下しており、とくに江原道平江郡の蘭松貯水池は62%も水が減少していたことが分かった。
北朝鮮の国営メディアも5月9日、「水不足が食糧不足を悪化させる可能性があり、農作物を被害から守ろうとする全国的な取り組みが行われている」と報じている。
今年の記録的な干ばつは「ラニーニャ現象」の影響によるものとみられおり、今秋の穀物などの収穫の見通しは厳しいものになりそうだ。
それ以上に深刻なのは飲料水の不足だ。北朝鮮では水道が整備されているのは首都・平壌市など大都市だけで、農村部ではいまだ十分に整備されていない。
このため、飲料水のブラックマーケットができており、湧き水を汲んで、5リットルや10リットルの容器に入れて売られているが、通常の10倍の値段にも達している地域もあるという。
北朝鮮では春の干ばつや秋の台風シーズンなど自然災害によって、水不足や食糧不足は年中行事化しており、その付けは常に庶民に回されているというのが実情だ。