「人生100年時代」は、いかに「元気で長生きできるか」が焦点となる。「健康寿命」を左右する要素は数多くあるが、なかでも重要なのが「心臓」の健康だ。
健康維持に「100年もつ心臓=100年心臓」が大事になると説くのが、「血管の専門医」で『60歳を過ぎても血管年齢30歳の名医が教える「100年心臓」のつくり方』(東洋経済新報社)の著者・池谷敏郎医師(池谷医院院長)だ。
適度な「運動」は心臓によい。
「やりすぎると心臓に負担をかけますが、適度な運動はむしろ心拍数を落ち着かせることにつながります。適切な心拍数とされる1分間に『(220-年齢)×0.5~0.7』を意識して運動すれば、心臓の負荷が軽くなり、運動後の心拍数も落ち着きます」(以下、「 」のコメントは池谷医師)
では、具体的にどのような運動がいいのか。池谷医師が推奨するのは、自宅で簡単にできるオリジナルの体操やストレッチだ。
「自律神経を整え血流をよくする目的で池谷式“脱力”エクササイズを考案しました。座ったまま両足・両腕をバタバタ動かすゴキブリ体操、寝る前のさびしんぼ体操は血行を促し自律神経が整います。池谷式の代名詞であるゾンビ体操は、その場で3~5分でできる有酸素運動。自律神経に影響するストレートネックや猫背、頭痛や肩こりの解消には脱・E.T.体操がお勧めです」
スキマ時間に立ったまま行なえる手クロス体操は、手のひらの血流をいったん止めた後に血流を再開させるため、血管が開放されて血行がよくなるエクササイズだ。
「こうした運動はメタボが解消されるだけでなく、ストレス発散にも役立てることができます。日常の様々なストレスは血圧や心拍数を長時間上げ続けて、心臓の健康に悪影響を及ぼします」
つまり、日頃のストレス・マネジメントも重要な意味を持つのだ。
「ストレス源を排除するか、その場から離れるなどの抜本的解決ができない場合、いかに上手に付き合うかが重要になります。イヤなことをなるべく思い出さないためには、リラックスできて自分の心が休まる方法を複数見つけておくといい。趣味が多いほど死亡リスクが低くなるとの研究結果もあり、心臓の健康のためにも没頭できる趣味を持つことが有効でしょう」
心臓を動かすのは不随意筋(意識して動かせない筋肉)だが、その健康は本人の意思や行動によって保つことができるというのだ。
※週刊ポスト2023年6月2日号