「海外作品にも参加してみたい」
──それでもやはり魅力がある。
飯島さん:体力的にはキツいですけど、それが毎日ではないです。何もないときはスタッフと食べ歩きをしたり、映画鑑賞をしたり。韓国料理の店主を招いて、料理を習うこともあります。メリハリはある仕事です。
──最近、台湾で料理教室をされた、と伺いました。
飯島さん:『深夜食堂』がアジアですごく人気だった影響なんです。こちらが普段作っているものを教える側ですと、文化の違いも気になりません。まだ実現していませんが、例えば、韓国の作品に日本食を扱うシーンがあって、そこに私がフードスタイリストで参加するなど、向こうの作品に出るのもいいですね。
岡本さん:こういうエネルギッシュな飯島の側にいると、「やってみたい」と思った仕事が巡ってくるんです。
板井さん:私も同じです。それでももし、今までやっていない新しいことをするとしたら、飯島が地方の特産物の産地を訪ねるドキュメンタリーを制作してみたいです。
飯島さん:私は東京都出身なんですけど、魅力的な食材の豊富な地方を盛り上げたいという気持ちはあります。元気にしたい。地方のおばあちゃんしか作ることできない料理を習うとか、知りたいことはたくさんあります。そこで私がアイデアをさらに加えられたら、料理の美味しさがさらに伝わると思います。
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不規則な時間拘束に、求められる膨大な体力。「30〜40人ぶんの料理を毎日用意したときは、さすがに大変でした」という板井さんのエピソードも聞かれた。それでも現場へ向かうのは、自分が必要とされる居場所がそこにあるからでは? 熱量のある彼女たちの会話に、そんなことをふと感じた。【了。前編から読む】
【プロフィール】
飯島奈美(いいじま・なみ)/フードスタイリストとして1998年より独立。映画、ドラマ、CMに登場する料理を手掛けるほか、食に関わるプロデュースも。参加作に映画『かもめ食堂』(2005年)『南極料理人』(2009年)『海街diary』(2015年)『すばらしき世界』(2021年)、ドラマ『深夜食堂』(TBS系列・2009年)『ごちそうさん』(NHK総合・2013年)『大豆田とわ子と三人の元夫』(関西テレビ、フジテレビ系列・2021年)など。レシピに関する著作も多数
板井うみ(いたい・うみ)/フードスタイリスト。2007年より飯島氏に師事
岡本柚紀(おかもと・ゆき)/フードスタイリスト。2005年調理師専門学校卒業後、大阪でフードコーディネーターアシスタントを経て、2012年より飯島氏に師事
※ドラマ『かしましめし』最終話は5月29日(月)夜11時06分からテレビ東京系にて放送。TVerでリアルタイム配信もあり。地上波放送終了後、動画配信サービス『Paravi』『Lemino』にて配信。
◆取材・文/小林久乃