永田町が解散・総選挙をにらんで浮き足立ってきた。自民党内からは「サミットの勢いのまま選挙に持ち込むべきだ」との声が高まり、野党側も「岸田さんにとって今は有利な状況。解散はあり得る」(岡田克也・立憲民主党幹事長)と応戦の構えだ。だが、総選挙で「台風の目」になるのは間違いなく日本維新の会だ。
維新は4月に奈良県知事選と衆院和歌山補選で自民党に勝利し、統一地方選で全国に多くの議員を当選させて自民党と政権を争う基盤をつくった。
維新に食い込むジャーナリストの長谷川幸洋氏(元東京・中日新聞論説副主幹)は、有権者の岸田政権への不満と維新への期待をこう指摘する。
「安倍―菅両政権は日本の政治を官僚主導から政治主導へと大きく転換させたが、岸田首相はそれを官僚主導へと逆戻りさせている。その典型が増税路線です。防衛費増額を口実に財源として増税を決める。少子化対策でも消費増税論が出ている。財務官僚に操られているから、まず増税ありき。
それに対し、結党以来一貫して改革を掲げてきたのが維新です。大阪で役人と喧嘩しながら府と市の二重行政の無駄を改革してきた実績がある。維新が政権を担えば、国の権限を地方に移すという長年の課題にも取り組むでしょう。維新には政治経験が浅い若い議員が多いが、有権者はそうした若い議員たちがこれから日本を担い、官僚組織と喧嘩してでも少子高齢化で停滞したこの国の社会、経済を変えてくれることを期待しているのだと考える」
角栄以来の“非大卒総理”
では、維新が政権を取った時、何が始まり、政治はどう変わるのか。「維新内閣」の具体的な顔ぶれがわかれば国民にはイメージしやすいが、維新は「シャドーキャビネット」を発表していない。
そこで本誌は長谷川氏や維新ウォッチャーとして知られるジャーナリスト・須田慎一郎氏の協力で、維新内閣の閣僚名簿を予測した。
■総理大臣 馬場伸幸
総理は日本維新の会代表の馬場氏だ。堺市議を19年務め、大阪維新の会結成に参加、12年に代議士に当選してからは国対委員長、幹事長、共同代表を経て2022年に松井一郎・前代表の跡を継いで代表に就任。統一地方選で維新を大きく躍進させた。
高校卒業後、調理師免許をとってコックの経験もある叩き上げの政治家で、就任すれば田中角栄氏以来の「大卒ではない」首相となる。
■副総理兼無任所大臣 吉村洋文
維新の共同代表を務める。コロナ対策の発信力で知名度を高めた。
知事と大臣の兼職を明確に禁止する法律はない。政府は小泉内閣時代、〈内閣の一員として国政を担う国務大臣には全力を尽くして職務に専念することが求められており、都道府県を統轄しこれを代表する知事も同様である。(中略)現に都道府県知事である者を国務大臣に任命することは考えられない〉という回答書を閣議決定しているが、担当官庁を持たない「無任所大臣」であれば府知事のまま兼務も可能だろう。
■官房長官 松井一郎
総理を支える内閣の要にはこの人だ。大阪府知事、大阪市長を歴任して行政経験は豊富。市長は引退したが、憲法では大臣について「過半数は、国会議員の中から選ばれなければならない」と定めており、現在9人までは民間人を起用できる。
「安倍政権の菅義偉・官房長官のように、首相を支えて霞が関に睨みを利かせることができる人物。民間人枠でも松井官房長官であれば官僚もやり放題はできない」(長谷川氏)