表面的な美しさだけではない、世界で活躍する「本当に美しい女性」を選出する世界ナンバーワンのコンテスト「ミス・ユニバース」。約40人のセミファイナリストたちは、8月末に日本代表が決定するまでの4か月間、トレーニングを共にする。己の美を磨き始めた女性の園に潜入した。
15cmのハイヒールを履き、何時間もひたすらレッスン場を往復し、ファッションショーのランウェイさながら笑顔でウォーキングする女性たち──。彼女たちは「自分らしさ」を表現する術を追求し始めたミス・ユニバース・ジャパンのセミファイナリストだ。全国から選び抜かれた約40人が集中的にトレーニングを積み、日本代表を決する大会へ進むための審査に臨む。本誌『週刊ポスト』はそんな彼女たちの奮闘に密着した。
取材した4月下旬、週末に行なわれる全体でのトレーニングは2回目。この日はグループワークのプレゼンが行なわれた。ボランティアやチャリティなどを通して社会貢献を実現するべく、具体的なプランを各グループが闊達に発表していた。
ミス・ユニバースは世界3大ミスコンテストの一角として、毎年約90か国以上の代表から“世界一の美女”を選出する大会で、SNSフォロワー数も世界一を誇る。その基準は「70年以上の歴史で初めて、2023年大会より婚姻や出産経験のある女性も参加できるようになり、外見の美しさばかりでなく知性や内面の美をこれまで以上に尊重する方向に変わってきている」と語るのはミス・ユニバース・ジャパンの運営を統括するナショナル・ディレクターの美馬寛子氏だ。
「大会理念の柱に、時代を象徴する女性リーダーの発掘と育成があり、知性や人間性を兼ね備えたしなやかな女性を世界へ発信したいと考えます。そのために必要なコミュニケーション力や発信力などをトレーニングを通して培っていきます」
各班が考えた寸劇やダンスなどを組み込んだプレゼンに、訴求力があると美馬氏も高評価で朗らかな雰囲気だった。10時から始まったトレーニングでは、英会話やネイルなどの座学も行なわれた。5月半ばに再び取材で訪れると、前回とは違い緊張感が漲っていた。ウォーキングレッスンでは、
「あなた、毎回同じウォーキングでつまらない」
「こんなレベルでミスをするなんて、許されない」
と厳しい指導が飛ぶ。セミファイナリストたちも真剣な眼差しで指導を受ける。戦いはすでに始まっているのだ。日本代表として2008年の世界大会で戦い、世界を知る美馬氏だからこそ、その檄には説得力がある。セミファイナリストたちも自身の状況を理解し、評価に一喜一憂せずに時間が許す限りウォーキングの練習を反復していた。10時から17時まで、この日はウォーキングに終始しトレーニングは終了。
8月末の決勝まで進めるのは10人。そしてたった1人が日本代表として世界大会への切符を手にする。日々成長する彼女たちの今後が楽しみだ。
取材・文/渡部美也 写真/小倉雄一郎
※週刊ポスト2023年6月9・16日号