在宅看取りを1800人以上、ひとり暮らしの看取りを120人以上経験した在宅医の小笠原文雄先生の著書『最期まで家で笑って生きたいあなたへ なんとめでたいご臨終(2)』が話題を呼んでいる。『週刊新潮』(5月 18日号)では立川談四楼さんが《そんな私に本書は希望を与えました。在宅医療という名の希望です》と、『サンデー毎日』(5月28日・6月4日号)では大平一枝さんが《読み終えて気づいた。これは、生き方の本だ》と絶賛。そこで、小笠原文雄先生が『最期まで家で笑って生きたいあなたへ』の読者から届いた質問に回答する。
医療崩壊、大丈夫でしょうか?
【質問】コロナ禍で、病院にかかれなかったりする人が出るなど、医療崩壊が盛んに報じられました。今後、ますます超高齢社会が進み、平時であっても病院にかかれない人が出てくるのではと心配になります。先生はどう思われますか?(40代・男性)
【小笠原先生の回答】
私は病院にかかれなくなるから幸せですよ、とこの本でお伝えしているつもりです。というのも、病院に入院して幸せな人は2割か3割で、あとの7、8割の人は在宅医療の方がいいと思っています。
病院じゃないといけない人は、救急救命をしないと亡くなってしまうかた、高度医療や感染管理が必要なかたですね。手術をすれば助かる人は絶対に入院して手術をしないといけませんし、例えば白血病の人だったら、やっぱりきちんと入院して抗がん剤を使った方が予後がいいわけです。
でも、抗がん剤を使うと早く亡くなってしまう人もいます。言葉は悪いですが、医学の進歩のために入院させて医療をやっている側面も多少はありますから、病院か在宅か、どちらが自分にとって幸せなのかを知っておくことは非常に大事です。
心不全も、入院していると血管が収縮して血圧が上がるから、増悪してしまう。心筋梗塞でも、不整脈で亡くなるリスクは数日間だけで、あとは不整脈はあまり起こらなくなるので、退院させた方が予後がいいかもしれない。家でも、心不全に効果があり、簡単な人工呼吸器が使えますし、点滴も家でできるんです。ただし、そうしたことができる医師は現在多くないので、残念ながら、知識や経験がない在宅医だったら、入院も考えた方がいいでしょう。