人生を変えるほどの病魔から救ってくれた名医との出会い、そして闘病生活について、各界の著名人に披露してもらった。左尿管がんと戦った元フジ・露木茂氏(82)が体験談を語る。
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2020年2月に盲腸の手術で入院した際、退院前日にCTスキャンで傷痕を確認したら、左の腎臓の下の尿管に腫瘍があることがわかりました。
そこで初めて対面したのが、国立病院機構東京医療センター泌尿器科医長の斉藤史郎医師(現在は大船中央病院前立腺がんセンターセンター長)です。
この時、斉藤先生は「この部位の腫瘍で良性は99%あり得ません。がんで間違いないでしょう」とはっきり言ってくれた。昔はがんの告知といえば家族や親族が呼ばれて重々しいイメージでしたが、この日は妻が同行することもなく僕1人だけ。斉藤先生がさらっと事務的に告知してくれたことがむしろ好印象でした。
斉藤先生は放射線治療の一種である前立腺がん小線源治療を日本で最初に行なった名医ですが、病状の説明はとてもわかりやすく、経験豊かなことがこちらにも伝わってきた。先生は手術前にこう説明してくれました。
「私たちはチーム医療に徹していて、泌尿器科の医師全員があなたのデータを共有しているので何も心配しないでください」
はじめは手術に不安がありましたが、斉藤先生の言葉にすっかり安心して“この先生にすべて任せよう”という気持ちになり、セカンドオピニオンは一切考えなかった。
そして5時間の手術で左の腎臓、尿管、膀胱の一部を摘出しましたが、少し驚いたのは手術の翌日から歩く練習をさせられたことです。斉藤先生に「高齢だから寝ていると足がどんどん動かなくなる」と言われて、部屋のなかをゆっくり歩くことから始めました。苦しかったけど、おかげで術後は順調に体力が回復し、何の異常もなく日常生活を送っています。
私がテレビによく出ていることも斉藤先生はご存じだったと思いますが、そんなことは意識しないで治療してくれました。
術後3年が経ちましたが、定期検査でも異常はなく、今では病気のことを忘れてお酒が飲めるのも斉藤先生のおかげです。
※週刊ポスト2023年6月9・16日号