これほどまでに閉鎖的で、「間違いを正そう」という声が上げられない歌舞伎界の体質には、驚き呆れるばかりだ。市川猿之助(47才)が主演し、途中休演した『市川猿之助奮闘歌舞伎公演』(東京・明治座)が、中村隼人(29才)の代役で5月28日に幕を下ろした。最終公演の終演後、幕前に正座した隼人は涙声で、
「若手一同は猿之助兄さんに支えられて、いまがある。われわれはずっと『味方』でいようと思っています」
「いつかまた会える日を信じて、精進して参ります」
と挨拶し拍手喝采を浴びた。
猿之助が自宅で倒れて救急搬送され、父である市川段四郎さん(享年76)と母親(享年75)が亡くなってから、2週間が経った。
「隼人さんは誰の“味方”なのでしょうか。『女性セブン』が2週間前に報じた猿之助さんのセクハラ・パワハラは、歌舞伎界では以前から少なからず知られていたことで、猿之助さんに近い役者や裏方たちが知らないはずはない。それなのに、それをみんなで無視し、黙殺し、封じ込めようとしています。
たしかに猿之助さんが倒れ、ご両親が亡くなられたことは、筆舌に尽くしがたい悲劇です。ただ、それとこれとは、話が別でしょう。もし隼人さんやほかの有力な役者たちが舞台上で、“セクハラ・パワハラをしてきた猿之助さんの味方”だと大きな声で表明するのなら、被害を受けた人にとって、これ以上の恐怖はありません。もう声を上げるな、という恫喝なのでしょうか……」
本誌『女性セブン』に猿之助の「濃厚セクハラ」の被害の実態を明かした歌舞伎関係者はそう語る。
隼人は、二代目中村錦之助の長男で“歌舞伎界のプリンス”とも呼ばれる門閥の御曹司。次世代のリーダーとしては、社会倫理に照らし率先して「性被害があるなら襟を正す」と言わねばならないはずだが、「猿之助の味方」を叫ばなければならない、何か深く暗い事情があるのだろうか。
《ハラスメントに関しましては、今まで猿之助に関わった複数のマネージャーに聞き取りをしましたところ、弊社管轄の現場において、そのような事実は現在出てきておりません。》
猿之助の所属事務所「ケイファクトリー」は5月23日、そう発表した。それをもって各メディアは、「所属事務所が猿之助のハラスメントを否定」と報じたが、その裏側はこうだ。
「発表のポイントは《弊社管轄の現場》というキーワードです。ケイファクトリーが猿之助さんをマネジメントする管轄の現場は、猿之助さんが出演するドラマや映画など現代劇や、バラエティー番組などへの出演に限ったものです。つまり、歌舞伎の興行や舞台、一門についてのことは『管轄外』である、ということを言いたかったんでしょう。
いくら歌舞伎の現場に関係ない現代劇のマネジャーに聞き取り調査をしたところで、猿之助さんが『権力』を持っていた歌舞伎内でのハラスメントが見えてこないのは、当たり前のことです。この所属事務所の発表をもって“セクハラ・パワハラはなかった”と結論づけることはできません」(歌舞伎評論家)