放送作家、タレント、演芸評論家、そして立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫氏が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。今回は、最近、気になるお笑い、ドキュメンタリー、ドラマ、映画について綴る。
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ベテラン漫才に復活のチャンス。『THE SECOND』で準優勝ではあったが“マシンガンズ”が本当によかった。生放送で勝ち抜き、3本もネタを見せられたんだから本望だろう。もうネタも尽きたのか、3本目など立ち話の世間話。ちょっとした愚痴。それもキャリアを積むと味になる。翌日、ナイツの塙が私に寄って来て「早速漫才協会に入れますんで」とニヤリ。こうして芸人ドラマはまた新しい展開をみせる。
普段は〈お笑い〉と〈ドキュメンタリー〉しか見ないテレビだが、この節作り物の〈ドラマ〉も面白くて見ている。それこそ若き日の芸人の悩みを描いた『だが、情熱はある』。オードリーの若林と南海キャンディーズの山里の物語なのだが、話題にもなっているがこのふたりを演じるふたりがそっくりの間と喋りなのだ。
私はひそかに春日の役を楽しんでいる。あの貧乏アパートで裸で西武戦のテレビを見ている春日。面白い。この時駄目なオードリーがまさかあの東京ドームでライブ(2024年2月)を行なうほどのエンターテイナーになると誰が予想しただろう。ある意味水商売の楽しさである。
水商売は客商売、人気商売。人の気持ちを商売にするのだ。それはラジオも同じ。スープカレー店で働く主人公(小芝風花)がひょんなことからラジオパーソナリティに。メッチャお洒落で格好いい小芝が金髪で真夜中に叫びつづけるのだ。かまずに一気に怒濤の喋り。タイトルは『波よ聞いてくれ』。最初は漫画からスタートしたらしい。私も35年以上ラジオパーソナリティをやっているがあの情熱には学ぶところも多い。
『全裸監督』でAV界を、『浅草キッド』で演芸界をつつみ隠さず描いてきたNETFLIXがついにタブーだらけの相撲界を描いた『サンクチュアリ―聖域―』が金星の面白さ。八百長、タニマチ、かわいがり。土俵の外には人の欲がうごめいている。丸い土俵の中には異常とも思える聖域がある。主演の一ノ瀬ワタルはオーディションで選ばれた。ピエール瀧演じる親方、呼び出しの染谷将太が結びの一番の深い味わい。
映画は何と言っても演劇界のウラ横綱と言われている達人・筒井真理子が主演の『波紋』。なんでもなかった主婦に訪れる放射能問題、介護、新興宗教、障害者差別。日本の縮図のようなあらゆる問題がふりかかる。表情ひとつでこわれ方まで見せていく。暗黒だった主婦の絶望が一転、ラスト爆発のエンタメへ。同情買う悲劇が喜劇だったとは。
※週刊ポスト2023年6月9・16日号