2023年4月の統一地方選挙で、地方ではありながら全国ニュースになった選挙のひとつが函館市長選挙だろう。それというのも、北海道出身として地元でも愛されている大泉洋の兄が出馬し、当選したからだ。そこで掲げられていた公約のひとつ「JR函館駅への北海道新幹線の乗り入れ構想」が注目を集めている。ミニ新幹線という形で構想実現を目指す北海道新幹線と函館市の事情について、ライターの小川裕夫氏がレポートする。
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2023年4月23日に投開票された北海道函館市長選挙は、新人の大泉潤候補が当選した。大泉潤新市長は、俳優・タレント・歌手などマルチな才能で人気を博す大泉洋さんの実兄としても知られる。有名人の身内といっても、大泉新市長は1995年に函館市に入庁してから市長選に出馬する直前まで、一貫して市職員として函館の発展に尽力してきた。決して弟の知名度で当選したわけではない。
その大泉新市長が選挙戦で目玉として訴えていたのが、ミニ新幹線を函館駅へ乗り入れるという政策だ。
「新市長の目玉政策であるミニ新幹線については、6月の議会に調査費を計上するべく作業を進めています。ミニ新幹線の計画はルートや建設費の概算など、まったく白紙の状態です。そのため、現段階でお話しできることはありません」と説明するのは函館市企画部計画推進室交通政策課の担当者だ。
ミニ新幹線は、専用の線路を新規で建設せず在来線の線路を生かす、1992年に開業した山形新幹線で初めて採用された方式のことだ。通常の新幹線とミニ新幹線が異なるのは、ミニ新幹線は在来線と直通できる点にある。
大泉潤・新市長が掲げる「ミニ新幹線」は三線軌条
鉄道の線路は2本のレールによって構成され、この2本のレールの間隔を軌間(きかん)と呼ぶ。在来線は1067ミリメートル軌間、東海道新幹線など本来の新幹線は1435ミリメートル軌間と異なっているので在来線と新幹線は同じ線路を走ることができない。だからといって、新幹線のために新規に線路を建設するとコストがかさむ。そして新幹線が走れば、当然ながら在来線の利用者を奪う。新幹線・在来線が共倒れになってしまう可能性が高い。
そこで考え出されたのが、ミニ新幹線だった。山形新幹線は在来線の線路を1435ミリメートルへと改軌し、新幹線の軌間に合わせた。これにより、新幹線が直通できるようになる。在来線の線路や施設などを転用できるので、整備費のみならずメンテナンスコストも縮減できる。こうした安価なミニ新幹線方式は、1997年に開業した秋田新幹線にも採用された。