暴力団といえば黒塗り高級車を運転手付きで乗っているイメージが根強いが、それも今は昔。「暴力団対策法」(暴対法)や「暴力団排除条例」(暴排条例)が厳しくなったことで、彼らもそのような派手な生活を避け、いわゆる“フツー”の車に乗るようになっているという。豪華な車を乗り回していた時代から、現代の“コスパ”を求める時代の両方を知る現役組員がリアルな車事情について明かした。
昔は高級ベンツ、今はトヨタ「運転も自分でする」
暴対法とは、暴力団が行う不当な行為全般を規制する法律で、「みかじめ料の要求」や「示談への介入」などといった行為を禁止したもの。それゆえ、暴力団も「組の名前を出して公に商売ができない」といった事情がある。さらに暴排条例が広がったことなどで、警察の暴力団への締め付けは厳しくなっている。
神奈川県を拠点としている暴力団員で、組織の相談役・A氏(60代)が、“時代の変遷”を振り返る。
「俺も昔は1500万円ぐらいするベンツSクラスの最上位グレード なんかに乗っていたけれど、最近はそんな高級車なんて全然乗らなくなりましたね。俺が今乗っている車はトヨタのカローラフィールダーで、新車で200万円ほど。高い車は目立つし、燃費も悪い。今の時代、普段からそんな高級車を乗り回すヤクザなんていませんよ」(A氏)
運転も自分がしているという。
「運転も、昔は俺くらいの地位になると、若い衆に運転手をさせていました。今はそんなことはしていない。人員不足ですね」
暴力団構成員は減少傾向で、かつ高齢化も顕著だ。その中で「若い衆」は貴重な存在だという。雑務を含め他にやるべきことを優先させると、車の運転をさせるためだけに人員を割くことは難しくなっている。