「角界ぶっ壊す!」──こんなキャッチコピーで荒くれ者の新人力士・猿桜(一ノ瀬ワタル)が、大相撲の世界で活躍する姿を描いたドラマ『サンクチュアリ─聖域─』(Netflix)。5月初頭に全世界で配信されたが、想像以上に反響が大きいようだ。ロス在住の映画ライターでハリウッド外国人記者協会所属の平井伊都子氏が言う。
「『サンクチュアリ』はNetflixが発表しているグローバルTOP10ランキングで、5/1-7が10位、5/8-14が6位と、2週にわたってトップ10にランクインしました。日本の作品は滅多に上位に入らないのでこの反響は上出来と言えると思います。よく見られていたのは日本のほかに、ギリシャ、キプロス、香港、クウェート、トルコなどです」
今作は豪華なキャスト陣でも注目を集めた。相撲部屋の親方役に騒動で表舞台から姿を消していたピエール瀧を起用し、その妻で部屋の女将さん役で小雪が出演している。さらに視聴者を驚かせたのが力士役の面々の“本気度”だ。テレビ業界関係者が語る。
「力士役の役者たちはこのドラマのために撮影が始まる前、約1年間にわたって元力士らの指導のもと、役作りのための稽古に励んだそうです。出演者のひとりは自身のSNSで体重を35キロも増量したことを明かしていた」
「日本のメディアでは太刀打ちできない」
まさに規格外のスケールだが、Netflixはそうした映像制作に対する「予算」も桁違いなのだという。
「力士役はオーディションで稽古と身体作りをしながら選ばれたそうですが、俳優陣は参加した期間中、最終的な出演の合否に関わらず全員が『月給40万円』を保証されていたそうです。段々と候補が絞られていきますが、最終選考まで残った俳優さんはかなりの期間、このオーディションに費やしていたそうです。とはいえ、この金額が約束されていれば生活の不安はなく挑戦できる。もし同じテーマで作品を作るとしたら、日本の映画会社やテレビ局じゃ制作費の面で太刀打ちできませんよ」(テレビ局関係者)
Netflixにオーディション時の保証について聞いたが「内部事情なので公にしていない」(広報部)と回答した。コロナ禍の巣ごもり需要で日本国内でも一気に普及したNetflixだが、今後も破格の予算でオリジナルコンテンツを量産していくことになれば、日本の既存メディアを“ぶっ壊す”ことになるかもしれない。
※週刊ポスト2023年6月23日号