中国では仕事や生活などのストレスを解消するために「電子木魚」を利用する若者が増えており、5月末現在で、あるショート動画プラットフォームでは関連する内容の動画再生回数が1億5000万回以上に達しているという。中国共産党機関紙「人民日報」が報じている。
「電子木魚」はストレス解消系アプリのことで、ネット上では「木魚を叩くという儀式を通して、自分を見つめなおし、魂を救うことができるほか、功徳を積むことができる」との利用者の感想が書き込まれている。
木魚を叩く単調なリズムは病みつきになると感じる人が多く、気分をリラックスさせる効果があるとして、様々な心理療法でも活用されているという。
電子木魚が人気を集めている背景には、中国が超学歴社会になっていることがあげられる。小学校から高校、大学まで試験の点数だけで、評価されるという厳しい現実がある。さらに大学卒業時には厳しい就職戦争が待ち受けている。中国最大手の人材会社「智聯招聘」が発表した最新のデータによると、2022年大卒者約1100万人の就職率は、例年就職率が高い工学部卒でさえ17.3%、文系学部卒の就職率は12.4%とさらに低く、「卒業と同時に即失業」という学生が大半だ。特に今年の卒業予定者は1158万人とこれまでで最も多いことから、「史上最悪の就職難になる」(同社)と予想されている。
日々厳しい競争にさらされるなか、学生を含む若者たちにとって、心を落ち着けてくれる「電子木魚」は一縷の救いとなっているともいえそうだ。