ヒフコNEWSでお伝えしてきた男性向け医療脱毛のウルフクリニック突然閉鎖は利用者に不安を与えている。医療脱毛の費用を支払ったのに、施術を受けられない人にとって大きな問題だ。クリニックが突然閉鎖されて、返金などの対応をしてくれない場合、クレジット払いをしていた人は、クレジットカード会社からの返金を受けられるのだろうか。
返金の求め方と支払い停止の対処法
2023年6月13日、テレビ朝日はウルフクリニックが破産手続きの準備をしていると報じた。ヒフコNEWSでも関係者に取材し、同様な情報を入手している。
このような状況は、医療脱毛の契約を結び、料金を支払ったにもかかわらず、施術を受けきっていない利用者にとって心配の種になるのは当然だ。未使用分の料金の返金を受けることも重要と言える。
ヒフコNEWSでも伝えたように、路頭に迷った利用者を少額で救済するクリニックやエステサロンが名乗りを上げているが、それも何度も施術を受けられるとも限らない。やはり未消化分の施術料が返金されるのがベストの解決策だろう。
また、返金以前の問題として、支払い停止の問題に対処する必要があることは知っておくと良さそうだ。突然のクリニックの閉鎖の場合、クレジットカードの支払い停止を申し出ることができる。「支払停止等の抗弁」という手続きが可能で、この手続きをクレジットカード会社に行うことで支払い停止を受けられる。
その上で、冒頭で触れたように、クレジットカードで支払い、クリニックの閉鎖などのトラブルがあるときに、返金を受けることは可能なのか、可能性について探った。
今回の医療脱毛のケースに限らず、同じような問題に直面することもあり得る。複数のクレジットカード会社にヒアリングした。
チャージバックの制度を利用した返金の申請
結論から言えば、クレジットカードのブランドや条件によっても異なるが、申請することで返金を受けられる場合はあるようだ。
上の図は、返金の流れを説明したものだ。
まず、クレジットカードには、VISAやMasterCard、JCB、American Expressといった国際的なカードブランドと、カードの発行会社が存在する。カード発行会社には、クレジットカード会社のほか、航空会社や小売店などのさまざまな業種の関連会社がある。
通常、返金請求を含めたクレームは、まずカード発行会社に対応してもらうことになる。
しかし、これで解決されない場合、カード発行会社は、加盟店の契約管理会社を通じて、返金を求めることになる。ウルフクリニックのケースであれば、加盟店がウルフクリニックであり、クレジット支払いを管理している会社が別に存在する。
カード発行会社が、加盟店の契約管理会社を通して返金を求めることを「チャージバック」と呼ぶ。チャージバックは、カード発行会社の「義務」ではなく、「権利」という位置づけなので、必ずしも返金が保証されるわけではない。しかし、具体的な状況を調査した結果として、返金を受けられる場合があるようだ。
医療脱毛の場合、契約書や残りの施術回数を示すメールのやりとり、チャージバックの申請書が必要になる。不測の事態に備えて、契約書などは必ず取っておくことが不可欠になる。それを捨ててしまったといった場合には、返金の機会を失うことになりかねない。
SNSには返金の報告も
SNSでは、ウルフクリニックの閉鎖後に実際にチャージバックを受けられたと報告している声が見られる。関係者によると、今回の突然閉鎖の事態を受けて、クレジット発行会社がチャージバックに応じている事例は出てきているという。
ヒフコNEWSでもエステ脱毛の倒産が過去最高になっていると伝えたが、ウルフクリニックのケースで言えるのは、同様なケースが美容医療の分野でも起きたということである。これは予測不能であったわけで、美容医療の利用者にとって同じように路頭に迷うことはあり得ると考えておくべきだろう。
今回は男性向けの医療脱毛だが、女性でもトラブルに備え、チャージバックという仕組みなどのルールを知っておくとよいだろう。また、契約書や施術の履歴などが分かる資料はなくさないように注意することを心得ておくべきだ。
参考文献
男性医療脱毛ウルフクリニック突然閉鎖も根は共通か、診療所の倒産が過去30年で最多、東京商工リサーチ調査
医療脱毛クリニック突然閉院、SNSで嘆きの声、相談窓口の設置も
「マジ終わった」脱毛クリニック破産手続き準備 被害総額1億8000万円か 集団提訴へ
「消費者委員会」説明用資料 (日本クレジット協会、内閣府資料より)
支払停止等の抗弁に関する手続きについて(ご案内)(日本クレジット協会)
【プロフィール】
星良孝/ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表、獣医師、ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。
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